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2022.12.11 15:00

サメは「ひれ」を使って海底を歩き、餌も食べる

コモリザメは大型で広く生息しているサメ種であり、世界中の熱帯および亜熱帯の岩礁に多く見られる(Getty Images)

サメは何百万年もの間、世界の海洋を徘徊してきた。ほとんどは水中を上がったり下がったりしながら泳いでいるが、選ばれた少数の種は「歩く」ことを覚えようと決心した。誤解しないで欲しいが、人間のように歩くわけではない。そうではなく胸びれと腹びれを使って海底に沿って移動する。あなたも見たことがあるかもしれない。

マモンツキテンジクザメ(epaulette shark)は、グレートバリアリーフのサンゴ礁の上や、オーストラリアの浅瀬に生息し、潮が引いて水の少なくなったところを自由に歩き回って捕食するところがドキュメンタリーで紹介されて有名になった。かつて科学者たちは、歩くサメは5種だけだと考えていたが、2022年の初め4種が新たに発見された。

真の「歩くサメ」というわけではないが、奇妙な方法で胸びれを使うのはこれらの小さなサメたちだけではない。英国エクセター大学環境保護センターのクリスティアン・J・パトロン率いるチームの最新論文は、コモリザメ(nurse shark、体長3メートル程度)が餌を摂取するために歩行行動することを示す証拠映像を初めて記録した。NGOのBeneath The Waves、Big Blue Collective、およびエクセター大学による共同研究によって、チームは軟骨魚類(サメ、エイなど)が滅多に見せることのない独特の採餌戦略に注目した。

コモリザメは世界中の熱帯および亜熱帯の岩礁でよく見られるサメの種だ。茶色いまだらの皮膚は色鮮やかなサンゴの中でよく目立つ。海底をさまよって過ごし、ゆっくりと動きながら獲物を探す。英名の「nurse shark(乳を飲むサメ)は、餌を食べるときに吸うような音を立てることに由来する。「コモリザメの行動と生態の理解を深めるために、2020年9月から2021年4月までタークス・カイコス諸島全体で集めたチャンスを捕らえたビデオによる観察を行いました。8台のカメラを使った233件の映像を観察することによって5種類の行動様式(下の画像参照)を特定し、うち4種類が採餌行動に分類されるものでした」とチームは説明する。

最初に観察された行動様式は垂直採餌(vertical feeding)で、サメが餌の容器の上に体を置き、頭を下にした垂直位置を保つ。カメラは、サメが容器から吸引採餌しているところを撮影した。

第2の行動様式は胸びれによるポジショニングで、サメは一方または両方の胸びれを強く曲げたりアーチ状にして、先端を地面(海底)着けながら「海底の抵抗を利用して体を餌入れの上や周辺のより優位な位置に移動してそこで吸引採餌が行われる」。通常、この行動は固定水平採餌(stationary horizontal feeding)の前兆で、サメは海底で移動体制を取り続け、餌の容器に頭を近づけた状態でゆっくりと吸引採餌を行う。仰向けになって餌を食べる「腹部採餌(ventral feeding)を行う場合もある。採餌行動に関係のない第5の行動様式は、サメが撮影機器にも餌にも興味を示さず通過する場合だった。


コモリザメの行動形態。a. 垂直採餌(VERTF)、b. 腹部ポジショニング(PP、『歩行』)、c. 水平静止採餌(SHF)、d. 仰向け採餌(VENTF)、e. 遊泳通過(SP)(PARTON, K.J., DOHERTY, P.D., PARRISH, M. ET AL. 2022)

「観察の結果、水平固定採餌(SHF)行動を示す比率は、浅瀬に住む種の方が岩礁に住む種よりも3倍近く多いことがわかりました。海底に寝転んでほとんど動かないことから消費エネルギーが少ないことが推測されます」と著者らは論文で述べている。「その他の採餌行動と、生息地タイプや深さとの関係を示す確実な証拠は見つかっていませんが、特定の採餌行動を推進するその他の環境要因の役割も無視できません」。コモリザメが示す採餌行動の多様性が、彼らの生態学的持続性の高さや熱帯、亜熱帯の多様な生息地タイプに貢献している可能性があると著者らは考えている。

コモリザメによるこのようなひれの動きと位置取りは、他の軟骨魚類、具体的にはbamboo sharks(Hemiscyllidae、テンジクザメ科)、sleeper rays(Narkidae、シビレエイ科)、smooth skates(Anacanthobatidae、ホコカスベ科)などと同じレベルではないものの、この行動様式が動的環境における積極的な採餌行動を支援するように進化した可能性は高い。それが今後別のサメ種でも見られるのかどうか、それは時間が経ってみなければわからない。

forbes.com 原文

翻訳=高橋信夫

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