子どもの不安障害治療に「薬」を使うことに親は躊躇してしまう

Getty Images

シンシナティ大学の研究者たちは、子どもや青年の不安障害の治療には薬物療法と認知行動療法(CBT)の組み合わせが最も効果的であるにもかかわらず、認知行動療法を受けた患者のうち薬の服用を処方されたのはわずか10%であることを明らかにした。

子どもたちが不安障害を軽減する際に、認知行動療法やトークセラピーのみでは十分な効果が得られないにも関わらず、この現状である。Journal of Clinical Psychiatryに掲載されたこの研究には、500人近くの子どもと青年が参加した。

その全員が、社会不安障害または全般性分離不安と診断された。研究者らが以前に行った大規模な試験で、認知行動療法と薬物療法が有効であることが明らかになったが、両者を組み合わせることで、はるかに優れた結果や不安症状の緩和が得られることが強調された。

「セラピーを受けても完全に良くならなかった人たちが、不安障害に対する他の効果的な証拠に基づく治療法である薬物療法を開始したかどうかを理解しようと思いました」と、カリフォルニア大学医学部の思春期精神科医であるジェフリー・ストローンはプレスリリースで述べた。

統計モデルの助けを借りてデータを深く掘り下げると、有色人種やマイノリティの患者は、白人の患者と比較して、不安障害の薬物治療を受ける確率が3倍低いことがわかった。

なぜ有色人種の親が子どもの不安を治療するために薬物療法を選択することをためらうのか、その理由について研究チームはまだ解明できてはいないが、心理学者のキャサリン・ダールスガードは1つの仮説を思いついた。親や子どもは、メンタルヘルスの治療から十分な利益を得ていないと考えた場合、完全に治療をあきらめる傾向がある。

「消極的な気持ちを克服して投薬を始めれば、彼らは実際に著しく良くなりました」と、ストローンはシンシナティ大学のプレスリリースに付け加えた。「平均して、人々は、中等度から軽度、または、重度から中等度になったので、これは、臨床的に顕著な違いです」

世界保健機関のデータによると、子どもの不安障害の有病率は、世界で5.7%から11%だ。研究者たちは、子どもの頃の不安は大人になってからも、特に中年期に影響をおよぼすかもしれないと警告している。通常、女児や社会経済的背景の低い子どもは、幼少期に不安障害になりやすい傾向がある。不安障害のような慢性疾患とともに、大うつ病性障害や気分障害といった他の併存疾患もよくみられる。

米国では、2016年から2019年にかけて、3歳から17歳の子どもの9.4%が不安障害と診断されたという、米国疾病予防管理センターのデータがある。

NHSによると、子どもの不安の症状には悪夢を見る、寝つきが悪い、集中力がない、食欲不振、依存が高まる、胃痛、気分が悪いと訴える、トイレによく行く、不安がない子どもと比較してメルトダウンが多くイライラして怒りっぽくなるなどがある。不安障害を放置すると、場合によっては自傷行為や精神科への入院に至る可能性があると、2018年の研究ではいわれている。

forbes.com 原文

翻訳=上西 雄太

ForbesBrandVoice

人気記事