「同業者のなかで頭ひとつ抜きん出るには、使い古された情報を焼き直していてはいけない」。オーディエンス・オーディット(Audience Audit)のスーザン・バイアー(Susan Baier)は、先ごろの電話インタビューでそう語った。「それは概念の受け売りにすぎず、独自に新しい概念を打ち出して他を主導するソートリーダーシップではない。受け売りでは注目してもらえないし、ライバルとの差別化も図れないだろう」
バイアーは、オーディエンス中心のマーケティング戦略分野で30年以上の経験を積んでおり、エージェンシー側とクライアント側の両サイドで、プロダクト管理やブランド管理、市場調査、戦略立案に携わってきた。起業とマーケティングの経営学修士号(MBA)をもち、フォーチュン500に名を連ねる企業やエージェンシーで上級職を歴任してきた人物でもある。
ソートリーダーシップを発揮できるリサーチをおこなうことによって、新たなクライエントを獲得するための、頼りになるルートを構築することができる。これは、筆者が「専有的なクライアント・リサーチ(proprietary client research)」と名づけた戦略であり、デービッド・マイスターの著作からヒントを得たものだ。
ハーバード・ビジネス・スクールの元教授で、その後コンサルタント業もしていたマイスターは、こう書いている。「現代のクライアントは、記事だのスピーチだのセミナーだのといった情報攻めに遭っている。しかし多くの場合、その中身は一般論にすぎず、そうした記事の著者や、セミナーのプレゼンターを、ライバルとなる有力な同業者と差別化するものではない」
マイスターは、1997年に出版した名著『プロフェッショナル・サービス・ファーム―知識創造企業のマネジメント』(邦訳:東洋経済新報社)のなかで、自分にはライバルにはないものが存在していることを証明するためのノウハウを説明している。
専有的なリサーチを行うことによって、クライアントとなりうる企業などが、他では見つけられない特定の情報を得ることができる。概して言えばこれは、クライアントが同業者と、どう異なっているかということに関する情報だ。次には、同業者との比較に関するこの情報を吟味したうえで、有益なコンテンツを生み出す。
ソートリーダーとして売り込むうえでの基本は、柱となるコンテンツを、話し言葉や書き言葉で表現し、発表することだ。そうやって、ターゲットとするニッチ市場のクライアントに役立つ専門知識を持っていることを示すわけだ。