腸内環境は「社会的つながり」で改善する可能性 研究結果

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病原体の伝染が同じ動物の間で、あるいは同じ環境に暮らす動物と人間との間でどのように起きているのかについては、すでに膨大な数の研究が行われている。

一方、腸のマイクロバイオーム(腸内細菌叢)の研究が進められるようになって以降、明らかになってきたこともある。それは、同一の動物の集団における「細菌の交換」の多くが、その動物の健康と生存に有益なものと考えられるということだ。

最近の研究によると、サルの社会的なつながりは腸内細菌をより多様化させ、病気の原因となりうる悪玉菌を減らすことに役立っていると考えられるという。ジャーナル「フロンティアズ・イン・マイクロバイオロジー」に発表した論文で、筆頭著者であるオックスフォード大学精神医学部のカテリーナ・ジョンソン博士は、次のように説明している。

「哺乳類の腸内細菌は、宿主の成長や消化、生理機能、代謝、免疫、そして行動に変化をもたらし得るものです。つまり、細菌叢と行動の間には相互関係があるということです」

「社会的交流が腸内細菌叢に影響を与え、細菌叢が社会的行動に影響を与えていると考えられるということになります」

研究チームはプエルトリコの島に生息する野生のアカゲザルの群れ(6~20歳のオス22匹と、メス16匹で構成)を対象に、社会行動と腸内細菌の組成の関連性について調査を行った。

チームは2012~13年にかけて、サルの便を採取したほか、お互いに毛づくろい(グルーミング)をし合う相手の数などに基づき、それぞれのサルが集団のなかで過ごす時間の長さなどを観察した。

論文の共著者である米コロラド大学ボルダー校認知科学研究所のカーリー・カーストン博士はサルのグルーミングについて、「非常に社会性の高い動物であるサルにとって、お互いに関係を築き、それを維持する主な手段となっている」ものだと指摘。そのため、「社会的相互関係の良い指標になる」と述べている。

研究チームは採取したサルの便のDNA配列解析を行い、腸内の細菌の多様性と組成を明らかにした。また、それぞれのサルが群れのほかのサルたちとの間にどの程度の社会的なつながりを持っているか調べる際には、そのサルの序列、年齢、性別も考慮したという。

過去に自閉症的特性について、ヒトやげっ歯類などを対象に行われた研究では、社会的に立場が弱い場合には、腸内の特定の細菌が少なくなっていたとの結果が示されている。そこで今回の研究では、チームはそれがどの細菌であるか特定することを目的とした。

その結果、あまり社交的ではないサルほど、ヒトであれば肺炎や咽頭炎の原因となる「レンサ球菌」が多く存在することがわかったという。また、強い抗炎症作用があり、健康に良い菌として知られている「フィーカリバクテリウム」の量と社交性に関連性が確認されたことは、特に注目すべき結果だとしている。

研究チームは、社会的行動と腸内細菌叢における細菌の多様性の関係には、グルーミングによる細菌の伝播が直接、影響している可能性があるとの見方を示している。一方、“友人”の少ないサルの方がよりストレスを感じており、それが間接的に、特定の細菌の量に影響を与えていることも考えられるという。

forbes.com 原文

編集=木内涼子

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