リピートしてくれた「地域ファン」へのお返しを
田代:篠山という地域は、人口は多くありませんが関係人口が多い。マラソンや味まつりなど地域に根付いたイベントがあって通過需要が見込めるので、広告や宣伝を税収拡大の選択肢に入れるという発想は面白いと、今も思っています。
「住民」の定義はその地域に住民票がある人ですが、現に、「交流人口」という半分住民権がありそうな人たちがいます。仮に彼らを「地域ファン」と名付けます。この先の持続可能なまちづくりに地域ファンは欠かせません。
ITはデータを可視化することができるので、街にいない地域ファンとも関係性を築くことができます。もし地域で何かやりたいことがあれば、1万人のファンに呼びかけて100円ずつ出してもらえれば、100万円の出資金を集めることだってできます。
地域に集客をするのは非常にコストがかかります。特に新しいお客さんを連れてくるというのは費用対効果が悪い。だからこそ、観光一度来てくれたお客さまをデータで管理するCRMを取り入れることが必要になるのですが、お金がある地域は集客できて、そうでない地域は魅力があっても埋没している現状で、接点を持った人たちの地域での貢献度をデータ化して、リピートしてくれた人へお返しをするためのネットワーク構築は急務だと考えてきました。
藤原:熱心なファンほど街にリクエストをしてくるものです。そんなファンと住民がコミュニケーションを取れて、マーケティングもできるプラットフォームの需要は、今後高まってくるはずです。
今、NIPPONIAの施設は全国に31か所にあります。さらに拡大すれば、将来的に地域ごとのファンが出てくるはずです。それをまとめるチャンネルがあれば、ファンである地域のNIPPONIAのことがわかるし、たまに他の地域を覗き見て、次に会いに行きたい人が見つかるかもしれません。
田代:地域間が競争するのではなく、同じ価値観を持つ者同士がゆるやかにつながることができて、自分の新しい発見を発信するともっと共感が得られる、そんなネットワークが求められてきそうですね。
「奈良のファンクラブを作りたい」
田代:「地域のファンづくり」の構想を考え始めたのは、2019年に中川政七商店の中川政七さんから「奈良のファンクラブを作りたい」と相談を受けたことがきっかけ。中川政七商店さんは300年以上奈良の中小企業として頑張っていらして、スモールビジネスの人たちのネットワークを作りたい。そして、地域が応援する「核」はチームスポーツだという仮説をお持ちでした。
デジタルとアナログの両方を使いながら、ファン作りをするという思いに共感し、全国47都道府県に広めましょうという話が出たほどです。
アナログとは、心が動くということです。
街のコアはスポーツチームだったり、そこに住んでいるアーティストだったり、工芸や自然でも構いません。感動させることができたら、情報はものすごくポジティブに広がる。これがデジタルのある世界です。