常連さん待遇で「地方にファンを」 丹波篠山はDXで交流人口増を目指す


努力を可視化、「ポイントを貯める」と常連さん待遇が受けられる


田代正雄氏(以下、田代):地域通貨、マイナンバーカードと運転免許証の統合など、今でこそITを使った新しい概念が世間に認知されてきましたが、藤原さんが集落丸山でIT活用しようと奮起していた2009年当時、「地域のファンを作る」というシステムを共同で作ったことがありました。

藤原:篠山の産品を全国で買ってもらうための「ふるさとポイント」ですね。

商品に貼ったQRコードのシールを読み込むとポイントが貯まるというものでした。全国どこからでもいいから篠山に貢献してくれた人を把握してみようと仕組みを作ったものの、貯めたポイントの使い道がなく、浸透することはありませんでした。

ただ将来的な可能性も感じていました。

ポイントという名の購入履歴が地域への「貢献度」の証しとなり、たとえば災害時に物資を送るような時に優遇される条件として活用できるかもしれない。東日本大震災の経験から防災の観点からも考えるようになりました。

田代:「常連さん」扱い。つまり、データを把握して「人の努力」を可視化するというのはまさにCRMの考え方で、シナジーマーケティングがヤフージャパングループの一員だった時代に私も興味を持った分野でした。

IDには様々なデータがひもづいていて、検索したページや購入したものなど、行動全てが履歴として蓄積されています。そのため、何のファンかはデータ上に表れているので、自分自身を表現するものになればいいなと考えていました。

応援するスポーツチームがあるとして、スタジアムに何回来ているのか、どの試合を見に来ているのかなどのデータを公開していれば、初対面でも「あの伝説の試合」を話すことができます。自らのデータを積極的に公開することで”人のつながり”が起こる時代が、近い将来必ず来ると思っていました。

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写真は田代氏

ガードレールに自分の名前をつけて、「守る」


田代:他にもう一つ、「まちのスポンサー」を募るというアイデアもありました。

「ネーミングライツ」という、図書館やガードレールなどの行政の所有物に名前をつける権利を与える代わりに守る義務があり、行政サービスを市民に還元するという取り組みの一つです。海外には、名前をつけた消火栓に雪が積もった時に雪掻きをすることを課しているケースがあります。

藤原:村には景観のように、行政だけでなく住民みんなで守っていかなければならないものがあります。行政化されているものを市民に戻すことが難しいならば、権利を与えるサービスを作り、住民みんなでバトンをつなぐようにすれば成立するはずだと地域の友人らに声をかけたのですが、理解を得られませんでした。
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文=上沼 祐樹 編集=石井 節子

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