テクノロジー業界で働く外国人の多くは、H-1Bと呼ばれる就労ビザを保有しているが、職を失った場合は、60日以内に仕事を見つけることが必要だ。
9月下旬に電子署名テクノロジー企業「ドキュサイン(DocuSign)」を解雇されたある社員は、「11月までに新しい仕事を見つけられると自分に言い聞かせた」とリンクトインに書き込んだ。「しかし、1カ月経っても仕事のオファーがなく落胆している。持ち物をすべて売り払い、この国で知り合った人たちに別れを告げ、国を離れることにならなければいいのだが......」
Layoffs.fyiによると、今月は約4万2000人以上の技術系社員が職を失ったが、これは2022年の他の月の2倍をはるかに超える量だという。人員削減の3分の2をメタ、アマゾン、シスコ、ツイッターの4社が占めており、移民専門の弁護士事務所フラゴメンのKathy Kholによると、この4社の社員の20%から30%が外国人だという。
2010年からこの業界で働いているKholは、最近解雇された労働者の少なくとも半数は、期限までに仕事を見つけることができないだろうと語った。
テック系の投資家もこの予測に同意する。「マイクロソフトやアマゾンなどのかつてH-1Bビザ保持者を最も多く雇用していた企業は、いまや雇用の凍結やレイオフを発表している」と、Agya Venturesのパクナル・ルナワットは言う。「レイオフされた人のほとんどが、行き場がない」
今のところ、アップルとアルファベットは雇用の削減を発表しておらず、初期段階のスタートアップの中には、まだ積極的な採用を行っている企業もある。しかし、ベンチャー投資家のマナン・ミータは、スタートアップのエコシステムには、ビッグテック企業が放つ雪崩のような求職者を処理できるだけの求人がないと指摘した。
米国で年を越せない移民労働者たち
さらに、年末年始の休暇が近づく中で、採用担当者の出勤日数も減り、H-1Bビザ保持者の60日の猶予期間の大半が宙に浮くことになりそうだ。
メタ社に解雇される前は、インスタグラムで倫理的なAIの研究に取り組んでいたHuy Tuは、期限が迫る中で、次の仕事のために広い網を張っていると言う。「社会的に意義のある仕事をしたいと思っているけれど、ある程度の妥協は仕方がない」と彼はフォーブスの取材に述べた。
夏に解雇された人々の中には、リビアン(Rivian)やゴーパフ(GoPuff)などの元雇用主が60日の期間を延長する方法を提示したと述べている。アトランタを拠点とするセキュリティ企業OneTrustは、解雇された従業員に6週間分の退職金か6週間の無給休暇のどちらかを選択させた。
--{「自分で起業する」という選択肢}--
しかし、もっと厳しい状況に置かれた外国人も多い。バズフィードの報道によると、メタではマーク・ザッカーバーグCEOがビザ保有者への支援を約束したにもかかわらず、レイオフされた従業員は何も知らされないままだった。前述のTuの場合は、メタの弁護士と話したが、彼らは移民の労働者の質問に答えるための「十分な知識がないように思えた」という。彼は最終的に、最近卒業した大学に連絡を取り、自分の選択肢を探った。
フォーブスが話を聞いた弁護士らは、テック系の労働者が60日以内に新しい仕事を見つけられない場合、観光ビザへの切り替えや、グリーンカードの申請、学校に戻って別の学位を取得するなどの別の手段が存在すると語った。しかし、これらのバックアップ措置には数千ドルもの費用がかかり、しかも、成功する保証はない。
「自分で起業する」という選択肢
一方で、既存のテクノロジー企業で働くのではなく、自らが起業するという道を選ぶ人々も居る(ただし、米国には起業家向けの正式なビザがないため、この道にもそれなりのハードルがあるが)。Agya Venturesのルナワットは、最近解雇された人々に連絡を取り、起業への関心を探っているという。
インドのムンバイ大学を卒業後に米国に渡り、現在はソフトウェア会社Databricksに勤務するVidhi Agrawalは11月初旬に、「解雇されたH-1Bビザ保持者のリストを非公開のデータベースにまとめて、企業の採用担当者に送る」というプロジェクトをリンクトインで告知した。するとわずか数日で、500人以上の人々がレジュメを提出したという。
Agrawalによると、このリストは採用担当者だけでなく、共同創業者を求める起業家たちの注目を集めているという。「米国にやってくるエンジニアの多くは、起業家精神にあふれる人々だ。だから、彼らには新しい仕事を探すだけでなく、自分で会社を立ち上げるという選択肢もある。もしも、それを望むのであれば、資金面でサポートしたい人も大勢いる」と彼女は話した。
(forbes.com 原文)