なぜ「うんち」には浮かぶものと沈むものがあるのか?

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ごちそうが並んで食べ過ぎが続きがちになる感謝祭ホリデーを間近に控えた今、私は人間誰もがする行為について書こうと思う。排便だ。中でも、私が子どものころ食卓で質問して親戚一同をぞっとさせた疑問「なぜ、便には浮くものと沈むものがあるのか?」について説明する。

はるか昔、医療に携わる人々は摂取した食物に含まれる脂肪の量が、便の浮かびやすさの秘密だと考えていた。しかし、最新の研究によると健康な人間にとって便の浮遊性の原因はそうではないかもしれない(ただし消化管感染あるいは膵炎は、身体が脂肪を吸収する能力を減少させるため、浮かぶ便を生成する可能性がある)。

あなたの内なる子どもがいつも疑っていたように、便の浮遊力はガスに関係している。基本的に、便の内部に捕らえられたガスの泡が、浮かぶものがある理由だ。しかし、そこで次の疑問が浮かぶ。なぜ、腸内にガスの多い人とそうでない人がいるのか?

ある研究チームが、別の疑問の調査中に、これらの関連する疑問の答えを偶然発見した。彼らは、特定の細菌種の存在がマウスの消化あるいは健康全般にどんな影響を与えるかを知るために、実験用マウスの腸内フローラを研究していた。チームは、一群のマウスの腸内を殺菌して通常の群と比較した。

実験の中で、殺菌されたマウスは常に沈む便を排出することを研究チームは発見した。これは、通常のマウスの半数の便が浮いたのとは明確に違っていた。

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実験デザインの概要。無菌マウスの便は沈み、腸内細菌のあるマウスの便は浮いた(DOI:10.1038/S41598-022-22626-X)

確かにそれは予想外の驚きだった。この発見は、腸内に住む細菌集団が浮遊便の原因であることを示唆している。この疑問を検証するために、チームはこの実験に参加していない健康なマウスの浮遊便を集め、この便を無菌マウスの腸内に注入した(注入方法は想像におまかせする)。

無菌だったマウスの腸に、通常マウスの浮遊便を再投入した後、それらのマウスも浮遊便を排出するようになった。それは研究チームにとって「ユリイカ!」の瞬間となり、浮遊便を作っているのが実は腸内細菌集団であり、一部の細菌種が他よりもガスを多く生成するためであるという仮説が提示された。

当然、チームはこの関連性を確立するために、どの細菌種が特にガスを多く生成するかを特定しようとしたが、それは成功しなかった。典型的な腸内細菌集団の中には、10種類以上のガス生成性細菌種があることをチームは発見した。その中の1つで極めて多く見られるバクテロイデスオバツス(Bacteroides ovatus)は、腸内細菌集団の酸素耐性のない種で、これが増えると人間の社会的交流にとって不都合になりうる。なぜなら鼓腸(腸内にガスがたまる)や腸疾患とつながりがあるからだ。

出典:Syed Mohammed Musheer Aalam, Daphne Norma Crasta, Pooja Roy, A. Lee Miller II, Scott I. Gamb, Stephen Johnson, Lisa M. Till, Jun Chen, Purna Kashyap & Nagarajan Kannan (2022). Genesis of fecal floatation is causally linked to gut microbial colonization in mice, Scientific Reports | doi:10.1038/s41598-022-22626-x

forbes.com 原文

翻訳=高橋信夫

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