また、世界で唯一の「AI虫分析」を武器とする環境機器(大阪府)も、審査員から高い注目を集めた。同社は社員の3分の1が昆虫の専門家で、防虫に特化した開発型コンサルティングを行う。虫オタクやポストドクターを積極採用し、ナレッジを武器に害虫対策などの顧客の課題を解決している。
環境機器の片山淳一郎
自身は虫嫌いだという代表の片山淳一郎は、外交官として世界平和のために働くことを夢見ていたが、父親の急逝により事業を承継。当初はさまざまな悩みがあったというが、「開き直り、顧客の経営課題を解決し、業界の地位を向上させることが役割だと覚悟を決めた」と語った。現在は全国の害虫駆除業者を顧客に50%の市場シェアを誇り、業績も右肩上がりで成長。今回のアワードでは、ドコモビジネス特別賞とベストタレントイノベーション賞をダブル受賞した。
ファイナリスト7社が受賞した特別賞は、以下のとおり(順不同)。
筑水キャニコム:グランプリ
浅井農園:グリーンレボリューション賞
環境大善:ローカルヒーロー賞
オータマ:ネクストムーブメント賞
竹中製作所:カッティングエッジ賞
シーパーツ:デジタルインパクト賞
環境機器:ドコモビジネス特別賞、ベストタレントイノベーション賞
グランプリを獲得した筑水キャニコムは、「草刈り機まさお」「荒野の用心棒ジョージ」など、ネーミングが特徴的な約50種類の草刈り機などを製造する。顧客に寄りそったものづくりを続け、創業73年で売り上げは70億円を突破。2022年は53カ国に及ぶ海外企業との取引が事業の6割を占めるほど、輸出も活発に行っている。
プレゼンでは、代表の包行良光が「ものづくりは演歌だ」という言葉が描かれたTシャツを着用して登場。包行は「私たちは、リクエストに応えて歌う“流し”のように、『こういう機械が欲しい』『作業をしながらものを運びたい』といったお客様のボヤキからものづくりをしています」と、会社の根幹となる精神を説明した。
グランプリを手にした筑水キャニコムの包行良光。Tシャツには「ものづくりは演歌だ」の文字が
今回の審査ポイントは、「グローバル市場の開拓」「地域への貢献」「稼ぎ続ける力」の3つ。審査員の藤吉は筑水キャニコムについて、「痒い所に手が届くようなニーズを汲み取り、価格競争を行わないという、これから日本企業がやらなければいけないところをすでに行っている」とコメント。今後の日本企業のロールモデルになるべき存在だと評価した。
審査員を務めた山井も、グランプリの理由について、「製造業の基本に忠実な上に、高度なブランディングが備わっている」と説明。市場の声を受けて改善を繰り返す姿勢とともに、商品のネーミングから経営者の振る舞いに至るまで賛辞を贈った。
グランプリを受賞した包行は、「農業業界は中小企業がほとんど。今後はロールモデルになれるよう、お客様のためになり、世界でも認知される農業機械を開発し続けたい」と語った。
幾多の困難を乗り越え、世界に影響を与えるまでに成長してきた小さな巨人たち。これからも、さらなる飛躍が期待される。
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