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2022.11.13 09:30

本格化するインパクト投資。ビックテックの次を生む「21世紀の革命」


「世界有数の上場株インパクト投資ファンドとMSCIオール・カントリー・ワールド・インデックスの過去1年分のリターン比較を見ても、43%〜22%程度、市場の期待を上回る経済リターンを実現していた」

それ以外にも、20年のGIIN調査によると、88%のインパクト投資家が経済的リターンの期待値を達成しているという。また、インパクト投資の平均リターン実績は先進国16%、新興国は18%と、通常のVCのリターン実績と比較しても遜色ない水準だという。さらに、KKRグローバル・インパクト・ファンドのグロースIRR(内部収益率)は69%にのぼる。

「日本では『社会によいことはもうからない』という固定観念があるが、そうではないことが数字でも明らかになっている」(中村)

こうしたグローバルの動きを受けて、日本でも、インパクト投資の流れが本格化している。その象徴的な出来事が、2021年11月に行われた、インパクト金融の加速に向けた「インパクト志向金融宣言」だ。22年7月現在、メガバンクや運用大手、地方銀行など33社が参加。社会や環境に配慮する企業に投融資することに加え、インパクト評価を図る方針を打ち出した。また、政府も、「新しい資本主義」の具体策として、インパクト投資をあげている。

日本のインパクト投資残高(20年、GSG国内諮問委員会調査)も、前年比2.5倍の1兆3204億円となった。この背景には、大手都市銀行や運用機関の新規参入により取組機関が1.5倍へ増加、既存取組機関の残高も2倍に増加、上場株式投資での取り組みが広がっていることがある。

「大手機関投資家をはじめとしたアセットオーナーと、インパクト企業を『つなぐ』、インパクト投資ファンドをはじめとしたアセットマネジャーの不足が日本の課題だった。この問題が解決されれば、一気に普及が進むとも言える。その動きは我々をはじめ、出始めている」

「次のGAFA」が誕生する


現在、テック株をはじめとした株式市場の大幅な下落、ロシアによるウクライナ侵攻に伴う、原油などの資源価格の高騰などで、ESG投資の財務パフォーマンスが悪化している。しかし、中村は次のように述べる。

「インパクト投資のパフォーマンスが特別に悪いという特殊要因はなく、脱ロシア依存という点からもクリーンエネルギー開発の需要も高まっている。世界を見ると、TPGキャピタルが22年4月、気候変動特化ファンド、TPGライズ・クライメートを総額73億ドルで組成。この超大型ファンドは、インパクト投資プラットフォームの一部として募集されたものだ。インパクト投資への流れはむしろ加速している」

そのほかにも、ブラックロックCEOのラリー・フィンクが「次の1000社のユニコーンはグリーン・ビジネスから生まれる」と述べるように、クライメート・テック領域へのVC投資金額は総額370億ドルと、多額の資金が集う。
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文=フォーブスジャパン編集部

この記事は 「Forbes JAPAN No.089 2022年1月号(2021/11/25発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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