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2022.11.02

米国で非大卒者に最も大きなチャンスのある企業はどこ?

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米国の求人広告では30年前に比べて、応募資格に大学の学位を掲げるものが多くなっている。米国人の大学進学率は上がっているものの、成人の62%は4年制大学を出ていないのが現状だ。こうしたなかで企業側から求められる学歴が高くなると、大卒未満の人たちは中間層以上に上昇する道を阻まれかねない。

幸いなことに、米国の大企業の一部はそうした流れに逆らっていることが、バーニング・グラス研究所とハーバード・ビジネススクールの共同プロジェクト「米国機会指数」の分析で明らかになった。機会指数は米国の大手企業250社を対象に、その企業が大学の学位をもたない労働者にどのくらい機会や上昇移動をもたらしているかを評価したものだ。

このプロジェクトでは、オフィスマネジャーやカスタマーサービス担当者など、4年制大学の学位をもたない人が就くことが多く、学歴条件の引き上げで影響を受けやすい職種で働く300万人あまりの職歴を追跡した、新しいデータセットを利用。非大卒者の採用率や昇進率、給与水準といった評価項目に基づいて、ランキングを作成した。

その結果、大学の学位をもたない労働者にどのくらいの機会が与えられるかは、企業の意思決定によるところが大きいことがわかった。同じ業種の企業でも、機会指数の評価項目では大きな差が生じることがある。たとえば、家電量販店ベストバイの店員は百貨店コールズの店員よりも、小売り管理職に昇進できる可能性が3倍ほど高かった。

機会指数の上位20%の企業は下位20%の企業と比べて、非大卒者の労働者の昇進率が3倍高かったほか、募集職に非大卒者が就く率も25%上回っていた。

重要なのは、非大卒者の労働者に多くの機会を与えている企業の業種がばらばらだったという点だ。機会指数の上位20%の企業には、主要27業種のうち21業種が含まれていた。大学の学位をもっていない人への機会創出は、企業の業種に左右されるわけではなく、企業の意思決定しだいだということだ。

機会指数のランキングでトップに輝いたのは、通信会社のAT&Tだ。同社では、高等教育の学位をもたない従業員が高度な教育を受けられるように学費補助プログラムを設けているほか、データ解析や機械学習といった専門分野を修めた人に「ナノ学位」も授与している。指数の作成者は同社について「従業員の昇進を積極的かつ持続的に促している」と評価している。

AT&Tのアンジェラ・サントーン副社長は「当社では大学の学位が必要なポジションは5%に満たないので、まずはスキルセットと経験を求めている」と説明。「トレーニングに多額の投資をしていて、社内には『たえず学ぶ』というカルチャーがある」とも述べている。

大学の学位をもたない人たちのチャンスを広げることは、米国にとってよいだけでなく、企業の収益にとってもプラスにはたらく。そうすることで、新たな人材プールを活用できるようになるからだ。これまでの研究から、企業側が不要な学位条件を取り除くと空きポジションが埋まりやすくなることがわかっている。さらに、非大卒者はいったん採用されると、比較的離職率が低く、従業員エンゲージメントも高い傾向にある。

機会指標のおかげで大手企業の幹部たちは、自社の非大卒者の採用・昇進方針が競合他社と比べてどんな状態なのかを知ることができるようになった。AT&Tをはじめとする企業は、米国の成人の62%を占める非大卒者を雇用すれば、彼ら労働者にも自社にも利益をもたらせることを理解している。今後はさらに多くの企業がそれに続くことになりそうだ。

forbes.com 原文

編集=江戸伸禎

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