経済・社会

2022.10.20 16:30

パキスタンの記録的な洪水の被害額は当初推定を上回る約6兆円

Getty Images

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パキスタンで今夏発生した壊滅的な洪水の被害額は少なくとも400億ドル(約6兆円)で、これまでの推定よりおよそ100億ドル(約1兆5000億円)多いことが19日に発表された世界銀行のデータで明らかになった。パキスタン、そして他のいくつかの国は気候変動が原因とされる壊滅的な洪水の余波からの回復途上にある。

パキスタン政府関係者は19日、1500人近くが死亡し、3300万人が影響を受けた歴史的なモンスーン豪雨による洪水では「資金と技術的リソース」の不足で事態が悪化したと述べた

同国のシャリフ首相は今週初め、復興作業と被災地再建のために国際金融機関に数十億ドル(数千億円)の融資を要請する計画を発表し、英経済紙フィナンシャル・タイムズに同国が「巨額の資金」を必要としていると語った。一方、同国のシェリー・レーマン上院議員は、国はすでに「既存の予算枠をすべて」洪水の救済に充てたと述べた。

多くの死者を出したパキスタンの洪水は今年発生した壊滅的なものの1つだ。他には、ナイジェリアで現在も続く洪水が含まれる。大雨や隣国カメルーンのダム放流などでナイジェリアでは少なくとも600人が死亡、2400人が負傷、さらに140万人が避難した。

今夏、バングラデシュや中国、インドでも50年ぶりの降雨量で大洪水が発生し、100人以上が死亡した。また、中国西部の一部では記録的な豪雨により300人が死亡、家屋9000棟が被災した。中国北部では洪水により28人が死亡、2万棟近くが損壊し、12万人が避難を余儀なくされた。

国連はパキスタン向けに8億1600万ドル(約1220億円)の人道支援を要請している。病原微生物に汚染された水の摂取による感染症や飢餓など、洪水の二次的影響が顕在化しているため、当初要請した1億6000万ドル(約240億円)から引き上げた。ロイターは2022年10月初め、国連がこれまでに同国向けの支援として受け取った額は9000万ドル(約135億円)だったと報じた。

パキスタンは8月にモンスーンによる記録的な豪雨に見舞われ、米ワイオミング州ほどの面積が水没し、家屋が流され、農地が被害を受けた。この洪水は、同国の75年の歴史の中で最悪のものと考えられている。

科学者たちは、気候変動が近年の大洪水の主な要因だと警告する。温暖化と強い暴風雨が洪水の発生と海面上昇を促進し、長く厳しい干ばつがますます大規模になっている山火事を引き起こしていると主張している。

シャリフ首相は、気候変動の影響は特にパキスタンに大きな打撃を与えていると述べた。19日の声明でシャリフ首相は人口2億2千万人を擁する同国の二酸化炭素排出量は世界の排出量の1%にも満たないが、気候変動の影響を最も強く受けている10カ国のうちの1つだと指摘している。

一方、非営利団体Africa Togetherとワシントンに拠点を置くEnergy for Growth Hubの2021年の報告書では、ソマリアなどの国々で最近起きた干ばつやナイジェリアでの洪水によって被害を受けたサハラ以南の資金難の国々は、気候変動の影響を直接感じているにもかかわらず「本質的に何も」気候変動に影響を与えていないとしている。

自然科学誌Nature Communicationsに6月に発表された研究によると、100年に1度の洪水で浸水するリスクがある地域に住む人々の数は、世界人口のおよそ4分の1にあたる18億1000万人だ。この中には南・東アジアの12億4000万人が含まれ、このうち10人に9人が低・中所得国に住んでいるという。

forbes.com 原文

翻訳=溝口慈子

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