バンク・オブ・アメリカは11日のリポートで、米住宅市場の減速を示す新たな兆しとして、不動産取引を代行するエスクロー会社や不動産の所有権(タイトル)に対する保険を手がけるタイトル会社への送金額の伸び率が今年、コロナ禍にともなう2020年半ばのリセッション(景気後退)以降初めて鈍化していると指摘した。こうした送金は通常、住宅購入時の手付金支払いの際に使われる。
住宅市場の減速で最も大きな影響を受けている業界は住宅建設かもしれない。住宅建設業界は8月に、米国は「住宅不況」に陥っているとの認識を示している。マスコやオーウェンス・コーニングなどが組み込まれている「S&P住宅建設株価指数」は年初来30%超下落しており、下落幅はS&P500種株価指数の24%よりも大きくなっている。
バンク・オブ・アメリカによると、住宅市場の減速は関連部門への影響を通じて消費者支出の足も引っ張りかねない。とくに家具への支出は歴史的に住宅販売と密接な関係があり、すでに前年比10%超落ち込んでいるという。
2000年代後半の「グレートリセッション」の引き金となった相場崩壊を含め、住宅市場の過去のサイクルでは、家具への支出は住宅市場に数カ月遅れて底入れする傾向がみられる。そのためバンク・オブ・アメリカは、今後いちだんの低迷が待ち構えている可能性があると記している。
このほか、家電など消費者向け電子機器や、家庭内娯楽も住宅市場の低迷で影響を受けやすい業界だ。家電量販大手ベスト・バイのトップは昨年、テレビやホームシアターなどの売れ行きが予想よりも好調だった理由として、住宅市場の活況を挙げていた。
米商務省の最新データによると、米国の8月の小売売上高は増加したものの、家具の売上高は前年同月比約2%、電子機器は約6%減少した。調査対象品目でマイナスを記録したのはこのふたつだけだった。
一方、バンク・オブ・アメリカによると、住宅関連では唯一、リフォーム関連業界だけは消費者支出が増えそうだという。
住宅市場は米連邦準備制度理事会(FRB)による利上げで最も深刻な打撃を受けている分野のひとつだが、アナリストらは住宅関連の影響だけでリセッションが引き起こされるのかについてはまだ確信をもてていないようだ。ただ、ハーバード大学の研究者らによると、米国の国内総生産(GDP)の7割を占める個人消費支出の伸びの少なくとも25%は住宅市場によるものと推定されている。
住宅ローンの申請数が1997年以降で最低の水準に落ち込んでいることから、一部のアナリストは需要の減退によって住宅価格が調整されると予想している。国際通貨基金(IMF)は11日、こうした調整が起きてもその波及的な影響は以前のリセッション時に比べると限定的なものになる可能性が高いとしつつ、住宅ローン証券化市場への参入企業が増えている米国の住宅部門などでリスクが顕在化してきているとも言及している。
(forbes.com 原文)