この理由の一つは、新型コロナウイルス感染症の流行と、労働者が非常に迅速に遠隔勤務に適応したことにある。2020年3月以降、労働者の業績は維持されるか改善し、生産性は高い水準を維持して、EBITDA(利払い・税引き・償却前利益)は増え続けてきた。それではなぜ、組織は過去に戻って従業員のオフィス復帰を要求しているのだろう?
未来学者で世界的なソートリーダーとしてベストセラー本も執筆したラビン・ジェスサーサンは、今までと異なる勤務体験がこの旧式の経営モデルを変革できると考えている。
ジェスサーサンは最新の著書『Work Without Jobs(職業のない仕事)』で、新型コロナウイルス感染症の流行により就労体験が根本からリセットされるだろうと指摘した。
ジェスサーサンは筆者の取材に対し「慣性と遺産は2つの強力な力だ」と述べ、「私たちは、これまで140年近くにわたり学習を重ね行動を形成してきた。それを取り消すのは非常に難しい」と説明している。
世界はコロナ禍により短期間で非常に大きな変化を経験し、以前の状況に戻ることは直観に非常に反しているように思える。組織はデジタル化と自動化を続け、一部の作業は消えて新たな仕事が生まれることを私たちは知っている。
「どのような働き方の人かにかかわらず、誰かが行う仕事は全て重要だということを心に留めておく必要があると思う」とジェスサーサン。「仕事を行う人としては、従業員やギグ労働者、外注企業の従業員、あるいは職には就いていないがすぐに利用可能な人材プールに属する従業員などが考えられる」
ジェスサーサンは、人事部のための新たな仕事の概念を説明した。職務記述書の使用をやめ、スキルと作業の概念を向上させることが必要となるものだ。
人事部が、従業員の適性やスキルのエコシステムを持つフリーエージェントのプールを構築し、そこに作業やプロジェクトを事業分野ごとに投げ入れることは可能だろうか? フリーエージェントの理念の下、ある従業員が半年間、見習いや一時的な配置換えのような方法で新しいものを試すことはできるのか? これは、新たな未来の仕事の一環となるだろうか?
ジェスサーサンは「もちろん」と答えた。「HRは現在、雇用の世話役から仕事の世話役へと立場を変え、従業員の能力を常に最新の状態に維持する方法を学んでいると思う」(ジェスサーサン)
仕事やその説明書だけでなく、スキルや、組織内で適性が提供される場が仕事の未来を示すことは非常に明確だ。「こうした場は、人々が既に持っているスキルを明らかにするだけでなく、新たに生まれる仕事とスキルを照らし合わせ、労働者の能力を向上させることができる」とジェスサーサン。
「仕事や人材がどこから来るかは重要ではない。社内外やギグワーカーなど何であれ、選択の余地があることが大事だ」
(forbes.com 原文)