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2022.10.12 16:30

本田圭佑、投資家として歩んだ6年 いま描く「世界初」の構想

左から、中西武士、本田圭佑、ソーヘル・プラサド(撮影=小田駿一)

左から、中西武士、本田圭佑、ソーヘル・プラサド(撮影=小田駿一)

「数えたら個人だけでも160社! 自分で引きますよ。やばい、投資しすぎやろ俺って」

本田圭佑は取材中、呆れるように笑い出した。エンジェル投資家時代を含め、6年間で投資したスタートアップは250社を超える。

「勉強代として割り切ったのもあります」と本田は苦笑する。

しかし、投資実績は目を見張るものだ。9社が時価総額10億ドルを超えるユニコーン企業に、2社が100億ドル超のデカコーン企業に成長した。10社に投資して1社から大きな財務リターンがあれば成功と言われるベンチャーキャピタル(VC)領域で、成果をあげてきた。

なぜ大きな実績をあげられたのか。投資家として本田自身が大きく成長できたのはなぜか。さらなる成長を遂げるために、彼は世界初の試みである新会社「XPV」を設立する。

成長の要因と、「世界初」の構想を聞いた。


個人資産から始まった投資


本田圭佑が投資家としてのキャリアを歩み始めたのは2016年。プロサッカー選手として、ACミランの10番を背負いイタリアリーグに在籍していたころだ。個人の資産を投じて「KSK Angel Fund」を立ち上げ、創業まもない企業への投資を始めた。

投資領域に人脈を持たない本田がパートナーに選んだのは、米国を拠点に投資運用分野で活躍してきた中西武士。

中西は日本でのプレーを望むサッカー選手の親友を助けるため、さまざまなチームやエージェントの紹介をお願いして回った。そこで出会ったのが本田の兄だった。

中西の親友は、実際に日本でのプレーを叶えたのだが、スペイン語が堪能だったことから、本田のメキシコリーグ移籍時にアシスタントに就く。その後、中西は兄を通じて本田と出会い、米国でサッカースクールを開校した。

こうした背景で出会った2人は、KSK Angel Fundを共同創業。これまで約100社以上に出資した。ポートフォリオには、2019年に上場したクラウドファンディングプラットフォームの「Makuake」や今年9月にIPOを果たした「プログリット」、「Luup」、「令和トラベル」などが並ぶ。

2年が過ぎた2018年、本田は新たに米国での投資に挑戦をする。ただ、米国のスタートアップ投資は、限られた投資家だけがアクセスできるインナーサークルが存在し、そこに入り込んでいけるかが、壁となって立ちはだかった。

本田らは、すでにネットワークを持つ人物をチームに招き入れることを考えた。そこで出会ったのが、俳優のウィル・スミスだ。ウィルは自身でも資産運用会社を経営している。こうして創設したのが「Dreamers Fund」だ。

本田、中西、ウィル。強力な布陣を揃えることで、有力VCからの紹介案件なども舞い込むようになり、成果を生み出してきた。

では、日米で投資をしてきた本田は、どのような学びを得たのか。
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文=露原直人

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