なぜ、北朝鮮は今、このような行動に出ているのか。すべては7回目の核実験に向けた布石だと言えそうだ。複数の軍事専門家は、超大型の戦略核から小型の戦術核に至るまで、複数の核実験を行い、日米韓に対して核兵器の威力をあらゆる形態で見せつけるつもりではないか、と予測している。短距離や中距離の弾道ミサイルだけではなく、潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)や、8月末ごろから発射の兆候が現れている新型の大陸間弾道弾(ICBM)火星17を発射し、核実験の「意義づけ」を行う考えなのだろう。
今、日米韓の政府関係者らが注目しているのが、中国政府の動向だ。中国は従来、北朝鮮の友好国でありながら、核開発には反対の立場を取ってきた。2006年10月に行われた初の核実験以降、中国は国連安全保障理事会の北朝鮮制裁決議にすべて賛成してきた。日本政府関係者は「中国は、北朝鮮が核を保有することで、自分たちのコントロールが効かなくなることを恐れている。中朝国境地帯で核開発に伴う放射能汚染が起きれば、内政にも深刻な影響を受ける」と語る。韓国政府関係者は「北朝鮮の核開発は、東アジアに核ドミノ現象を生み出すかもしれない。日本や韓国、台湾などに核保有の動きが広がることは、中国としては絶対に避けたい」と指摘する。
北朝鮮が今年春、核実験の動きを示したときも、中国は過去と同じとみられる行動に出た。関係政府筋によれば、中国は親しい第3国に対し、「我々は北朝鮮に核実験の中止を求めた。核実験を行えば、国連制裁決議に賛成せざるを得ないという立場も伝えた」と説明した。日米韓がこの未確認情報を入手してからしばらく経った後、北朝鮮は核実験への準備や、それに関連するとみられるミサイル発射の動きを停止した。
ところが、北朝鮮は9月、再び弾道ミサイルの発射に着手した。このため、中国の北朝鮮に対する核実験中止の申し入れは、「10月に行われる共産党大会で、第3期習近平体制に入るまで」という条件がついていた可能性がある。