米最高裁、YouTube動画の「レコメンド」の法的責任の審理開始

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米最高裁は10月3日、テロ組織ISISへの参加を促すYouTube動画をレコメンドしたグーグルに、法的責任があるかどうかの審理を開始すると宣言した。さらに、同様のコンテンツをめぐるツイッターなどの対応についても裁判で取り上げると発表したことで、ハイテク企業のコンテンツへの責任に注目が集まっている。

2015年のパリでのテロ事件で死亡した女性の父親は、グーグルがISISの動画をユーザーにレコメンドしたことが、テロ組織の活動に重大な役割を果たしたとして、同社が法的責任を負うべきだと主張している。

ソーシャルメディア企業はこれまで、通信品位法230条に基づき、ユーザーが投稿したコンテンツに関する法的責任を免れてきた。この法律は、企業がプラットフォーム上に掲載された第三者が発信する情報について責任を負わないことを定めている。

今回の訴訟は、230条の免責の適用対象に動画のレコメンドを含めるべきか、それともコンテンツに関してのみ適用されるべきかを最高裁に問うものだ。

原告のReynaldo Gonzalezは、230条の免責対象となるのはコンテンツの公開や取り下げなどの基本的行為に限定されるべきで、レコメンドは含まれないと主張している。一方、グーグル側はレコメンドが230条で保護されていると主張している。

連邦地裁と控訴裁はこれまでの裁判で、グーグルの主張を認めたが、別の控訴裁はグーグルに責任があると判断していた。

最高裁はまた、2017年にトルコで起きたテロ事件でツイッターやフェイスブック、ユーチューブらが同様な責任を問われた訴訟についても裁判で取り上げると発表した。

グーグルは、最高裁に提出した書類で、「YouTubeのレコメンドが免責されないと裁判所が判断した場合、230条は死文化する。裁判所は、現代のインターネットの基本を脅かすような230条の法的解釈を行うべきではない」と主張した。

YouTubeのアルゴリズムは、誤情報を含む過激なコンテンツや政治的に偏向した動画をユーザーにレコメンドしているとされ、ウェブブラウザー「Firefox」を開発するMozilla Foundation は2021年7月の調査で、レコメンドされた動画の70%に不快な内容が含まれていると指摘した。

2018年のウォールストリートジャーナルの記事で、YouTubeの現役エンジニアと元エンジニアらは、YouTubeが意図的に過激なコンテンツをレコメンドしている訳ではないが、「高いトラフィックを集め、人々をサイトに留めている動画をレコメンドした場合、それはセンセーショナルな内容のものになる傾向がある」と述べていた。

forbes.com 原文

編集=上田裕資

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