「すごい地方公務員アワード」 今年受賞した9名は何を実現したか

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同じ福井県福井市の出蔵健至は、「このライトノベルがすごい!」に2年連続総合1位に輝いた『千歳くんはラムネ瓶のなか』とのコラボを実現。


出蔵健至。「市役所の外で市役所の相談を受ける」というコンセプトで、週1回のスナックアフターファイブも開催。この人脈で作品とのコラボを深化した

福井のスポット、グルメなどが随所に登場するこの作品に惚れ込んだ出蔵は、コラボを事業化する前に自分自身の足で作品のスポットに足を運び、情熱のこもった「聖地マップ」を制作した。

登米市(宮城県)の小野寺崇は、NHK連続テレビ小説「おかえりモネ」を登米市に呼びこんだ。撮影地に求められるさまざまな調整をくじけそうになりながら実現した。住民からも「崇(しゅう)ちゃん」と呼ばれるほど親しまれている人物だ。


小野寺崇。朝ドラ誘致、ロケ支援に奔走し誘致後も一過性に終わらないアクションを評価され、PR TIMES賞を受賞した

「同じ社会を良くする仲間」


前半に紹介した5人の「業務改善」は、メディアに注目される機会が少ない。地道な取り組みであるがゆえに、その価値やインパクトが伝わりづらいからであろう。実はこういった取り組みの価値を見出すのは、ビジネスマンが得意かも知れない。

後半4人の取り組みは、一見派手に見えるためメディアも扱いやすい。そのため、役所内外から目立つことをするなと批判的な目を向けられる苦労もある。しかしながら、業務の大部分は地道な調査や日々培ってきた住民との信頼構築に他ならない。冷静に俯瞰してみれば、どの仕事も成果も地味な業務の積み重ねによってもたらされている。

彼らのような公務員の仕事は、果たして「お役所仕事」「税金泥棒」に当たるだろうか。今回紹介したような公務員の活躍を見れば、定型文化した批判や公務員全体に対する行き過ぎた批判は、社会インフラを担う行政の力を削ぎ、国民全体にマイナスの影響を及ぼすリスクを認識しておく必要があるのではないだろうか。

公務員を「同じ社会を良くする仲間」としてとらえることができれば、役所の成果に好影響を及ぼし、住民自身に還元される面があることは忘れるべきではないだろう。

連載:公務員イノベーター列伝
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文=加藤 年紀

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