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2022.09.25 17:00

「非感染性疾患」予防は対応進まず、死者は年間4100万人以上

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非感染性疾患(NCD、心血管疾患やがんなど)について、世界保健機関(WHO)は先ごろ発表した報告書で、「適切な対応が取られていないことにより、感染症以上に多くの人の命を奪っている」と指摘した。

NCDによって毎年およそ1700万人が早期死亡しているほか、NCDは2秒に1人のスピードで、70歳未満の人の命を奪っているという。また、NCDで早期死亡する人は、ほとんど(86%)が低中所得国の人たちだ。

WHOのNCD担当大使を務める米国人富豪マイケル・ブルームバーグはこうした死の多くについて、「効果が証明され、費用対効果が高い介入の方法に投資していれば、防ぐことができたものだ」と述べている。

国連は持続可能な開発目標(SDGs)の一つに、「NCDによる早期死亡を2030年までに30%減らす」ことを掲げている。そして、加盟国のすべてが、この実現を約束している。だが、実際にこの目標を達成できそうな国は、ほとんどないとみられている。

NCD発症のリスク要因の多くは、すでによく知られているものだ。WHOによると、「喫煙」と「不健康な食事」によって死亡する人は、いずれも年間800万人以上とみられている。また、「飲酒」と「運動不足」が原因となるNCDで死亡する人は、年間それぞれ約170万人、83万人と推定されている。

報告書は、NCDを巡るこうした状況にほとんど対応が取られていないのは、単に多くの人が「この問題の深刻さを理解していないからだ」と指摘。NCDの治療に「有効であることが分かっている介入方法をすべての国が導入すれば」、2030年までに少なくとも3900万人の死亡を防ぐことが可能であるとの見方を示している。

WHOはまた、NCDで命を落とす人は、世界全体で毎年およそ4100万人と推計している。最も多いのは「心血管疾患」による死亡(年間約1790万人)で、「がん」(同930万人)、「慢性呼吸器疾患」(410万人)、「糖尿病」(200万人)が後に続いている。

NCDはどの疾患でも、患者の生活の質に大きな影響を与える。そして、その他の病気にもかかりやすくする。報告書は、NCDの予防と治療は「比較的少ない額でも投資をすれば、大きな成果があげられるはず」だという点を強調。それは、「データが明らかに示していることだ」と説明している。ただ、「世界がそれに目を向けていないことが問題」なのだという。

ブルームバーグを大使に再任


WHOは2016年、NCDと負傷を担当する大使に元ニューヨーク市長のマイケル・ブルームバーグを任命した。そして、このほどその任期を延長したことを発表した。

主に金融・ビジネスなどの情報を配信するブルームバーグの共同創業者でもあるブルームバーグはNCDについて、世界で最も多くの命を奪っている「サイレントキラー」だが、それによる死の多くは防ぐことができるはずだと述べている。

ブルームバーグはこれまでに、慈善事業に数十億ドルを寄付しているが、その多くは禁煙など、NCDの発症につながるリスク要因への対応を強化するための取り組みに向けられている。

フォーブスのリアルタイム・トラッカーでは、ブルームバーグの推定資産額は768億ドル(約10兆円)。ビリオネア・ランキングの13位となっている(9月22日現在)。

forbes.com 原文

編集=木内涼子

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