中小ビジネスこそ米国経済の源 コロンビア大がハーレムで始めたこと

HLVP(ハーレム・ローカル・ベンダー・プログラム)の創設者、ニコア・エヴァンス氏。来夏はハーレムでの大規模な屋外コンサートも企画


「スモール・ビジネス法」も


米国政府は1953年にスモール・ビジネス法(SBA)を作り、以後、小規模ビジネスの支援を行なってきた。現在は23の部門に分かれ、その一つがSBDCとなっている。米国政府には「スモール・ビジネスは米国経済のエンジンである」とする考えがあるのだ。


近年、健康食として人気が高まっている海藻シー・モス(ジェル状にしたもの)のブランド "Lovers Rock" を立ち上げたリック・ウィリアムスさん。シー・モスはウィリアムさんのルーツであるカリブ海で特に愛用されている。https://loversrockseamoss.com/ credit: Studiosmith for Columbia Business School

SBDCは州ごとに運営され、ニューヨーク州には22カ所のセンターがあり、そこにコロンビア=ハーレムSBDCも含まれる。コロンビア=ハーレムSBDCはハーレムの名を冠してはいるが、ニューヨーク州の小規模起業家なら誰でも無料の支援が受けられる。エヴァンス氏は、それとは別に地元ハーレムのビジネス・オーナー、なかでも人種民族マイノリティと女性に特化したプログラムHLVPを起案し、コロンビア=ハーレムSBDCの一環として開始したのだった。

夏の間、HLVP参加者はニューヨーク市内はもとより他州でのストリート・フェアやポップアップ・ショップに多忙だった。レストランや店舗を持つ参加者もコロナ禍で被ったマイナスを挽回するためにフル回転となった。それが一旦落ち着く10月にはエヴァンス氏が企画運営する毎秋恒例のハーレム・ハーヴェスト・フェスティヴァルに参加し、その後は一気にホリデーシーズンの商戦突入となる。参加者はそれぞれに多忙を極めながら授業を受け、ビジネスプランを練って新たな取引先を模索し、交渉も続けている。


シェリファ・ゲイルさんのストリート・ファッション・ブランドの名は "Black n’ Ugly" (黒人で醜い)。黒人への偏見を逆手に取ったネーミングであり、黒人文化をプライドとするデザイン。https://blacknugly.com/(credit: Studiosmith for Columbia Business School)

今年で7年目となるHLVPは、これまでに200人以上の卒業生を輩出している。そもそもはハーレム再開発に伴ってハーレムの目抜き通りに進出した高級スーパーマーケット、ホールフーズとのパートナーシップから始まったこともあり、卒業生の商品はそこでも販売されている。日本公演も行われたゴスペル・ミュージカル『ママ、アイ・ウォント・トゥ・シング』のプロデューサーであり、ハーレム音楽シーンの顔役でもあるヴァイ・ヒギンセンが開発、販売しているホットソース「ママズ・ワン・ソース」は同スーパーの人気商品だ。他にも大手デパートのメイシーズやノードストローム、通販サイトQVCで商品が販売されている卒業生もいる。

ハーレムならではの文化と地域性、人の繋がりによって成長したHLVP(ハーレム・ローカル・ベンダー・プログラム)のビジネスがハーレムを超え、全米に行き渡っていくのだ。

※筆者は2022年度HLVP参加者

堂本 かおる◎大阪市出身。1996年に渡米、ニューヨーク市マンハッタン区北部ハーレム在住。ハーレムのパブリックリレーション会社インターン、学童保育所インストラクターなどを経験後、ライターに。以後、ブラックカルチャー、移民/エスニックカルチャー、アメリカ社会事情全般について日本の雑誌・新聞・ウェブサイトに執筆(TwitterOfficial Web Site

文=堂本かおる

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