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2022.09.15 08:30

世界でバズった米袋屋さんの意外な結末──編集長コラム


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白石さんは紙袋と一心同体になりたかったらしく、この写真のように頭にかぶって投稿した。白石さんが回想する。

「朝に投稿したら、昼前にはスマホのブイ〜ンという音が鳴り止まなくなって、怖くなりました。会社に迷惑をかけると思い、相談役の父に報告に行きました。父からは『バズるって何やねん?』『SNSって何やねん?』と言われて、一通り説明した後、こう言われたのです。『わかった。お前はバズらせるのが目的やったんか? 違うやろ。工場の稼働の問題の解決やろ。そのことは忘れるな』と」

しかし、コトは意外な展開を見せるのだが、その前に3種類の反応を紹介しよう。
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①海外も含めた、たくさんの解決策のアイデア
②メディアの取材
③想定しなかった人々

①は米袋の用途のアイデアだ。例えば、UAE(アラブ首長国連邦)からは、ラクダの飼料用の袋が紫外線劣化によって、粉々のマイクロプラスチックとなり、砂漠に撒き散らされているという。環境問題の打開策として紙でできた米袋が使えるのではないか。

シコーが製造する米袋は30キログラムの米に耐えられる。さらに、紐がついているため、再封緘ができる。何度も使用できる紙製の紐付き米袋を製造しているのは日本の企業だけである。また、寄せられたアイデアにはペットの猫の寝袋からリュックサックまで、よくもまあ思いついたものだというものが並んだ。用途だけではなく、アフリカや東南アジアからは輸入の提案も届いた。

②のメディアは、webニュース「まいどなニュース」の記事が皮切りとなった。Yahoo!ニュースに転載されるや、雪だるま式にTBS「THE TIME,」、夕方のニュースTBS「Nスタ」に出演。そして日テレの「スッキリ」ではMCの加藤浩次が面白がって用途アイデアを5分にもわたって紹介し続けた。

白石さんがマンションのエレベーターに乗っていると、出勤中のご近所さんが耳元で、「見ましたよ、白石さん」と挨拶をする。会社に行くと、今度は取引銀行までが「見ましたよ」と言ってくる。テレビで取り上げられると、すぐに「経済効果◯億円」と計算したがる人種がいるが、この間、私は白石さんとツイッターのDMでやり取りしていると、彼がお金では決して買えない別のゾーンに突入しているような気がしてきた。

③想定しなかった人たちとは、まずはライバルであるはずの同業他社の社長たちである。「よくぞ言ってくれた」「面白いことになった」など、迷惑がるどころか、3社の社長が応援の言葉を送ってきた。さらに同業他社の応援は拡大していった。それだけではない。会社のOBや従業員たちが面白がった。白石さんに近い立場の人たちほど、「紙袋と一心同体となった若社長」の行動に共感したのだ。
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文=藤吉雅春

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