残留手当から在宅勤務の柔軟性向上、辞めた従業員の職務を埋めるための採用ボーナスまで、非常に多くの会社がありとあらゆることを実験している理由もここにある。しかし、企業がまず厳しい現実を認めなければ、こうした技巧や奨励策が機能する可能性は低い。
会社が従業員を保持するにはまず、社員に不満を与え、やる気を奪うことをやめなければならない。
筆者のコンサルティング企業リーダーシップIQでは、2553人の従業員を対象に「Frustration At Work(職場での不満)」と題した調査を実施した。
この調査では、最高の生産性の達成を阻んでいた最大の不満や障壁を評価した結果、仕事で抱える非常に大きな不満を理由として他の仕事を探したいと思っていると述べた従業員は60%ほどだった。また84%は、不満を解消することで大幅に生産性が増すだろうと答えた。
業務量や人材配置は不満のカテゴリーのうち上位2つを占め、合わせて39%だった。残りの不満は、悪質な同僚や、管理が不十分あるいは粗悪なこと、明確な指示の欠如などの問題に散らばっていた。つまり、人材不足や業務量の増加が最も大きな不満の種だが、社員に辞めたいと思わせる不満には他にも多くのものがあるのだ。
そこで、自分が従業員として仕事に常に全力を尽くしていると想像しよう。あなたは、自分よりも仕事が下手な同僚が残した厄介な状況を片付け、期待をはるかに超えるサービスを顧客に提供し、会社の価値観を例外なく体現している。
しかし上司は、不注意からかそれとも勇気がないからか、あなたが誰よりも高い結果を出していることを認めてくれない。あるいは、あなたが会社の価値観の模範となるため格別に努力しているのに、管理職は会社の価値観に従わない同僚を見逃しているかもしれない。
その場合、あなたはどれくらい不満を抱えるだろう? 辞めるくらい不満になるだろうか? また、少額の残留手当や1週間の休暇を追加でもらうことで、この悩みは解消されるだろうか?