6600万年前の白亜紀後期に、現在はメキシコとなっている浅い海に直径10キロメートルの隕石が衝突し、直径180キロメートルのチクシュルーブ・クレーターを作り、生存種の75%以上を全滅させた大量絶滅の引き金になった。
その破壊的山火事が衝突によって起こされた可能性を巡っては不確かなまま議論が渦巻いており、火事がいつ、どうやって始まったのか、およびその全貌についていくつかの説が提起されている。
バハ・カリフォルニア半島にある化石発掘現場を調査した英国、メキシコ、ブラジルからなる地球科学者チームは、隕石の衝突から数分以内に北米を山火事が呑み込んだことを最近発見した。衝突が起きた時、調査地点は大陸の西海岸に位置しており、衝突中心から2500キロメートル以上離れていた。
衝突に続くメガ津波に洗い流され炭化して化石化した樹皮を調べることで、その樹木が流されて津波のがれきに埋まる前に、火事が樹木を焼き尽くしていたことがわかった。これは衝突で生まれた火の玉、あるいは、衝突直後に大気に撒き散らされた溶岩滴の熱によるものだとチームは判断し
「これまで火事が衝突の直接的な結果によるものか、それとも衝突後に大気に打ち上げられたがれきが作った暗闇のために枯れた植物が、落雷などによって炎上したためなのか、明らかになっていませんでした」とアバディーン大学地球科学学部教授で、この国際研究の共著者であるベン・ネラーは説明する。
「この国際チームを結成することで化学、同位体、古生物学、古植物学および分光分析というユニークて組み合わせの技術を、地質マッピングとあわせて応用することが可能になり、まず分析する岩石が間違いなく衝突によるものかどうかを確認しました」
「次に私たちは、化石化した幹についたままの樹皮を分析して、燃焼の程度を特定した結果、樹皮が衝突由来の津波に押し流された時はすでに炭化していたことがわかりました。これは、衝突の遅くとも数分後には燃え始めていたことを示しています」
「最終的に私たちの研究は、あの壊滅的な火災がいつ、どうやって始まったのかを確認し、隕石衝突の直後に何が起きたのかを、鮮明かつ実に恐ろしく描きだしました」
論文『Timing and causes of forest fire at the K–Pg boundary(K-Pg境界に起きた森林火災の時期と原因)』は Scientific Reports (2022)に掲載されている。資料はアバディーン大学から提供された。
(forbes.com 原文)