天の川銀河の渦巻構造が地球大陸形成の引き金になった可能性

天の川銀河のイラスト(Getty Images)

一風変わった地質学的運命のいたずらか、ある研究チームは、私たち人類が暮らす大陸が、40億年前に地球が天の川銀河の渦巻腕を通過したことが引き金となった衝突体の副産物である可能性が高いことを報告した。

科学論文誌『Geology』で発表された論文で、オーストラリアの学者率いるチームが、世界六大陸のうち少なくともいくつかは、地球が天の川銀河の渦巻状の「腕」を周期的に通過したことが引き金となった衝突体によって誕生が始まったことを示す研究結果を発表した。

著者らは、天の川銀河の渦巻腕の中の高密度星間雲が、太陽系外縁部にあるオールトの雲から来る彗星の地球に向かう高エネルギー軌道を周期的に摂動させる引き金になっていたと主張している。

およそ2億年周期で繰り返された彗星の地球衝突が、私たちの惑星の大陸地殻の形成を促進するきっかけを作った可能性が高い、とGeological Society of America(GSA、米国地質学会)は報告している。

著者らは、そのような宇宙の周期性の証拠は、オーストラリア西部のピルバラ地域およびグリーンランドの両方で、ジルコン鉱物の結晶の中に見られると述べている。

地球の大陸地殻の形成は、循環的に起こり、およそ2億年ごとに地殻の生成が進んでいったとGSAは指摘している。これは地球が私たちの銀河の4つの渦巻腕を通過したことに対応している。オーストラリアとグリーンランドのいずれでも、ジルコン結晶中のウランの崩壊を利用して、約28~38億年前からの期間の地殻形成の年表を作ることができる。

渦巻腕に入るときと出るときに地球への衝撃が増加したと推論するとカークランドはいう。「腕への進入が重要なのは、腕を通過する際の重力摂動のためだ」と彼はいう。それは、圧縮されたガスが腕を通過することで、太陽系のオールトの雲に摂動を起こす可能性があるためだと論文の主著者でオーストラリア、パースのカーティン大学の地質年代学者、クリス・カークランドは述べた。


探査機ボイジャーがオールトの雲に達したところの想像図。1970年代後半に2機のボイジャーが打ち上げられた。ボイジャー1号は星間空間に到達し、現在太陽の磁場の影響を受けない位置にいる。ボイジャー2号は2020年代に同じ行動をする予定。今からおよそ300年後、2機の探査機はオールトの雲(太陽から50,000天文単位離れたところを周回する不活性の彗星の中心核の集団)の始点に突入する。オールトの雲はあまりにも巨大であり、そこを通過して何もない宇宙へ出るまでには約4万年かかる(Getty Images)

渦状腕からの脱出も重要だ。それは、その時まで私たちの太陽系は星の密度の高い空間領域で過ごしてきたからだ。その結果、オールトの雲を引き金とする地球衝突が増え、それと合わせるように複数の恒星遭遇が起きる確率が高くなる。

「衝突の影響は、他の地殻形成プロセスが始まる前、すなわち地殻が保存される前の第1ステージにすぎないと考えています」とカークランドはいう。
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翻訳=高橋信夫

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