インフレ抑制法は、パリ協定に参加している米国にとって良いものだ。その達成に向けては、グリーン水素とそれから派生するグリーンなアンモニアが、特に重工業と輸送セクターで重要な役割を果たすだろう。
これこそ、再生可能エネルギーに投資する豪企業フォーテスキュー・フューチャー・インダストリーズ(FFI)が、ドイツのポリマー製造業者コベストロ(Covestro)と共同で取り組んでいることだ。FFIは、早ければ2024年から毎年最大10万トンのグリーン水素を供給する予定だ。
同社はアンドリュー・フォレスト会長の下、2030年までにグリーン水素の供給量を1500万トンまで増やし、最終的には年間5000万トンまで拡大することを目指している。FFIは、世界でも有数の大規模な電解工場(水素と酸素を分離する伝統的な方法だ)をオーストラリアに建設中で、重工業の脱炭素化が可能であることを示したいと考えている。
水素は現在、石油精製や肥料生産に広く活用されているものの、さらに活用量を増やすには輸送や建築物、発電へと拡大させる必要がある。
コベストロのマーカス・シュタイレマンCEOは「グリーン水素とその派生物は、代替原料、そしてクリーンエネルギー源の両方として化学産業で重要な役割を果たしている」と述べている。
しかし、電機大手のシーメンスによると、政府支出を増やすには時間がかかるだろう。同社はドイツで電解槽に約3300万ドル(約45億円)を費やしていて、これにより大きな経済の構築が促されるはずだ。そうなれば風力や太陽光で生産された水素の価格を低下させ、天然ガスと同等の水準にすることが可能になる。
風力や太陽光で生産した水素は現在、少なくとも1キロ2.5ドル(約340円)だが、今後の進展のためには1キロ0.8~1.6ドル(約110~220円)まで下げる必要がある。
ドイツを拠点とし、2つのグリーン水素のプロジェクトを手掛けるユニパーSE(Uniper SE)のクラウスディーター・マウバッハCEOは「宣言された気候変動の保護目標を達成するには『グリーン電子』と『グリーン分子』が必要だ」と述べ、「(ドイツでは)鉄鋼生産の脱炭素化のため、大規模な水素製造施設が建設される予定だ」と語っている。
風力と太陽光エネルギーの費用は下がっていて、グリーン水素はこれまでに増して手が届きやすくなっている。米国のインフレ抑制法は、これをさらに促すことが期待されている。
同法が成功を収めれば、化石燃料依存からの脱却が困難なセクターでも脱炭素化が大きく進むだろう。それにより、米国の経済は2030年までに二酸化炭素の排出量を約40%削減できるはずだ。
(forbes.com 原文)