山田:日本の商品やサービスは高性能で技術も高いのに、世界の同じジャンルのものと比べて価値付けできていないものが多いと感じています。
田中:日本人は価値をつけるのが苦手なのでしょう。高い付加価値を付けるためには、ストーリー作りが重要です。ただ「モノが良い」と言って売るだけでは、それなりの価値にしかなりませんね。ヨーロッパのブランドは、商品の歴史や国王が使っていたなどのストーリー作りがうまいですね。山田さんのご専門ですが、日本はどうしたらいいのでしょう。
山田:他との違いを鮮明にし、そこを起点にストーリー作りをすることだと思います。違いは唯一性、オリジナリティ、すなわち価値につながるからです。デザイン性も重要ですね。
田中:私もついこの間、会社で「普通のことはやるな」と言ったばかりです。
山田:違いは、突拍子のないことである必要はなく、既存のサービスや商品に360度の視点から切り込めば、自ずと出てきます。その時に重要なのが、いかに幅広い消費者視点を持てるか。ハイエンド層はさまざまなライフスタイルを持っていますので、その理解の一助になればと、このHIGH END STUDYも提供しているんです。
ところで田中さんは、リラックスしたり、リセットするためにはどんなことをされていますか?
田中:休みが全くない中、30年ぶりにスキーを始めました。純白の世界で一人滑るあの感覚、これはいいなと。面白くなってすぐに神田のスポーツ店に行って一式揃え、翌週から10週連続で滑りました。普段と違う触覚、視覚、嗅覚を感じられるのがすごくいい。
山田:では、田中さんにとって、真に豊かなトキ、コト、モノってどのようなものですか。
田中:ともに喜び、ともに苦しむような仲間がいることですね。人間は自分のためよりも、他人のための方が頑張れる気がします。まちづくりは一生懸命やればやるほど、アンチや抵抗勢力が増えることもあります。辛い状況を乗り越えられるのは、やっぱり支えてくれる仲間のおかげです。
山田:心に残っている旅、自分の内面が高まったような旅の思い出はありますか?
田中:ヨーロッパブランドを研究する旅です。オーストリアのビール会社の8代目、北イタリアのワイナリーの王子様のような5代目当主に話を聞いたのですが、皆さん高尚で。自分たちがどういう存在で、地域や社会に何をもたらしているのかを熱弁していました。非常に社会性の高い企業がヨーロッパには多いのだと、とても印象に残りました。
私から逆に質問させていただくと、山田さんがハイエンドというところにフォーカスして自分の活動を始めたきっかけは?
山田:馬から馬車への移行など、歴史的に見ても新しいイノベーションやライフスタイルは、ハイエンドな人たちから取り入れられてきました。目の肥えた層のニーズに応えることは、さまざまな産業が質を高め、経済を活性化し、世の中がよくなることにつながるからです。
田中:まさに。最近地元で「群馬リーダーズオープンプラットフォーム」を立ち上げました。起業家だけでなく、自身の人生を意志を持って生きる人は全員リーダーなのではないかと思い、今オンラインとオフラインの併用で開催しています。また前橋にもぜひいらしてください。
山田:ありがとうございます。ぜひ!