私財を投じて社会に貢献 世界のリーダーに備わる意識のハイエンド

ジンズホールディングス代表取締役CEOの田中仁(左) Urban Cabin Institute パートナー山田理絵(右)ban Cabin Institute パートナー山田理絵(右)


田中:ありがとうございます。街中のツアーは毎月2回程度やっています。

山田:世界を代表するデザイナーたちとのお付き合いの中で感じたことは?

田中:ジャスパー・モリソンやミケーレ・デ・ルッキ、コンスタンチン・グルチッチたちは世界的なデザイナーで、彼らが作り出すものはとても素晴らしい。しかし彼らには全く浮ついたところがなく、地に足のついた人たちです。事務所もシンプルで余分な装飾がない。そして人との出会いや縁を大切にする。デザインが生き方に合っていて、とても勉強になりました。


デザイナーのミケーレ・デ・ルッキと

山田:そういう方々が白井屋ホテルにすごく貢献してくださったのですよね。

田中:それも全てボランティアで。「ホテルをリノベーションすることになったんだけど、ぜひデザインしてくれないか」とお願いしたところ、「タナカ、どこでやるんだ」「前橋ってどこだ」「いい街か?」などと聞かれ、「東京から100キロ。まあ1回来てくれ」とお連れしました。

すると街のさびれ具合にとても驚いて、「タナカ、ここで大丈夫か?」と。「あんまり大丈夫ではないけど、誰もやってくれないから自分でやるしかないんだ。しかもみんながそこを目的に来てくれるようなホテルにしたい。だからそこにはぜひあなたの部屋が欲しいんだ」と言ったら、「わかった、協力するよ。仕事じゃ受けないけど、無料だったらいい」と。しかも「ホテルの部屋を手掛けるのは、最初で最後」とまで言ってくれて。


デザイナーのジャスパー・モリソンと

山田:心に染みるお話です。それにしてもなぜそこまで協力してくれたのでしょう。

田中:彼らにとっては、思いがどこにあるかが一番大事。ただお金になるから仕事をする、という人たちではない。多くのメガネブランドからの依頼を断っている中で、JINSのデザインを引き受けてくれた理由は、安価でハイクオリティなメガネを誰もが気軽にかけられるようにという『眼鏡の民主化』をしたから。

ジャスパーも他のデザイナーも、自分のデザインしたものをみんなに広く使ってほしいという思想なので、眼鏡の民主化に共感してくれ、ホテルも市民のためのまちづくりが目的ということで協力してくれたのだと思います。

山田:しかも、豊かにかっこよく、おしゃれに民主化した。そのJINSの付加価値はどう実現したのでしょう。

田中:上場後に伸び悩んだ時、ある先輩経営者から「ビジョンなき、志なき経営は、絶対に継続的に成長しない」と言われ、それまで自分が考えていたビジョンを全て一度リセットしました。

眼鏡の可能性を大学病院や専門家と研究し、サイエンスとエビデンスによって他社にないものを作り出そうという活動が、ブルーライトカット眼鏡や機能性アイウエアなどに繋がっていきました。 
次ページ > 「普通のことはやるな」

文=山田理絵

ForbesBrandVoice

人気記事