ハワイ移住成功者に共通する3つの特徴、「思いきり」「使いきり」「割りきり」

撮影 岩瀬英介


そして、最後の「きり」は「割りきり」だ。何でも受け入れて「日本のようにはいかない」と諦念の気持ちで割りきって考えられるかどうかということになる。

小さなことで言えば、家の修理などで業者を呼んでも、まず来ない。「いつ来るか」と尋ねて「何時」と返ってくることは期待しないほうがいい。「朝9時から昼までに行く」「午後2時までに行く」このくらいがせいぜい。さらに遅れて来る。来たところで現場を視察し、「うん、これはあの道具が必要だ。今日は無いからまた」と言って帰ってしまう。で、次のアポが入るまで数週間。そんな繰り返しなのだ。

個人宅ならまだいい。これがレストランの開店などで店舗の内装工事などとなったら一大事だ。デザインがあがり、工事に入ったものの、資材が米国本土から届かない。2カ月してようやく届いたと思ったら寸法が違った。返品してまた2カ月待つ。工事が進んできたら、設計図と違う。よくよく調べたらガスの配管が違っていて、許認可を取り直さないといけない。その認可に半年かかる。そんなこんなで1年以上、工事が延びるなんてザラだ。

賃貸契約には厳格だから、その間の店舗の家賃は支払い続けないといけない。ある高級寿司店などは、オーナーが「ハワイの風」が大好きだから新規出店する店舗は大きく窓を取って風が吹き抜ける設計にした。

工事中に日本に行く用事があり、ひさびさにハワイの現場に来てみたら窓がまったく開いてない。「どうしたことか」と棟梁に詰め寄ると、「設計図が違っていた」などと言い訳ばかりされた挙句、最後には、資材を使って工事してしまっているので変更すると費用がかかりますと言われた。

不幸なことに、工事スタート時に「設計図通りにつくられなかった場合はやり直す」または「費用を返す」という契約を結んでいなかった。業者の都合の良い契約書にサインしてしまっていたわけだ。

米国は契約が全て。日本では考えられないことだし、そんなことはないだろうと思い込みで契約を結んでしまう人が意外に多い。契約締結時に弁護士に依頼できればいいのだが、それも高額な費用がかかる。


こんな夕日も毎日の恒例

「割りきり」と簡単に書いたが、ここまでの事態を割りきるのには、相当な胆力が必要かもしれない。こんな苦労があっても、ハワイの風を心地よいと感じることができるか。皆さんはどう思われるだろうか。

筆者が取材した移住者たちは、口を揃えて言うのである。「でもハワイにいる。ハワイの風があれば頑張れる」。そして最高の笑顔を見せる。

「思いきり」「使いきり」「割りきり」と3つの「きり」について紹介したが、ハワイ移住に一番大切なのは、ハワイを愛する気持ち、それきりで十分なのかもしれない。

文・写真=岩瀬英介(ハワイ在住エディター)

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