今回、日本発「世界を変える30歳未満」の30人を選出するプロジェクト「30 UNDER 30 JAPAN」のフード&ドリンク部門を受賞した岩本が目指す、お茶の未来とは?
「お茶で、日本文化の価値を世界へ証明する」をミッションに掲げ、2018年にスタートアップのTeaRoomを創業。代表の岩本涼は、起業家でありながら、幼少期から茶道を始め、2020年9月には24歳にして裏千家から宗名を与えられた茶人としての顔ももつ人物だ。
「人が2人集まれば、そこには必ずお茶が介在する。人流が発生するところには、必ずお茶の需要が生まれるんです」
TeaRoomは、お茶のプロデュースや製品開発、飲食店への卸事業やコンサルティング業務などを手がける。静岡県大河内にある茶園と工場を継承し、商品開発から生産、販売、流通までを一気通貫で行う。東急ハンズとコラボしたウイスキー紅茶「THE CASK AGING」の開発や、Mr. CHEESECAKEへの希少品種である抹茶の提供なども話題だ。
岩本の独自性は、お茶を単なるプロダクトとしてだけではなく、新たな価値をつくりだす手段と考えている点だ。カルチャープレナーとして、習い事や作法としての「茶道」にとどまらない、根本的な「茶の湯」の思想を軸にした新しいお茶ビジネスのエコシステムを構築、展開している。
「茶室では目の前の人を慮る姿勢や、茶器や花などを通して美的感覚が磨かれます。こうした茶の湯の思想を共有する人たちが出会う場を提供することで、集まった人たちの間で新たなプロジェクトやコラボが生まれ、自然発生的に異分野の交流や横のつながりが広がり事業につながっていく。そうした日本茶文化の伝播を体系化した事業を進めています」
創業から5期目を迎えたいま、売上高で毎年300%の成長を続ける。茶人としての知見を生かしたサロン的役割を果たす茶の湯の稽古場も、東京をはじめ、今後は京都や金沢などにも開設予定だ。
お茶の文化と産業をつなぐ架け橋に
明治期には日本の輸出総額のうち20%ほどを占めていたお茶が衰退産業といわれるようになったのは、清涼飲料水の急速な流通拡大が大きい。約40年前に缶入りの烏龍茶が日本で初めて発売されてから、茶葉そのものの価値は下がり続け、ボトル入り飲料へとその価値は移った。
この変化がお茶を「茶の湯」という文化と、ペットボトル飲料というマス産業へと分断し、それまで培われてきた技術や知見が断絶されたり、閉ざされたりして「スタックしているのがいまの状態」だと岩本は言う。
「だからこそ、我々の事業が提示するソリューションは社会課題の解決とニアリーイコールだと思っています。日本のクラフトシーンを絶滅させないためにも、茶人でもある自分が、文化と産業を有機的につなげていきたい」
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いわもと・りょう◎1997年生まれ。TeaRoom代表取締役CEO、茶道家。裏千家での茶歴は16年を超え岩本宗涼という茶名も持つ。早稲田大学政治経済学部卒。