新型コロナによる嗅覚喪失は、長期的な認知機能障害と密接に関係

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研究結果


研究チームは、影響がみられた領域の数によって、認知能力を評価した。その内訳は、正常な認知、記憶のみの障害(単一領域:11.7%)、記憶障害を伴わない注意力と実行機能の障害(2領域:8.3%)、および複数領域の障害(11.6%)だった。

研究チームのガブリエラ・ゴンザレス=アレマン(Gabriela Gonzalez-Alemán)博士は、メドスケープ・メディカルニュースに対し、参加者には「アルツハイマー病と同様に記憶障害が主にみられ」、また「記憶と注意力の問題が重複」している割合も高いと述べている。

対照群には嗅覚障害はみられなかった。新型コロナウイルス感染症に罹患したサンプルの40%には、嗅覚障害が顕著に認められた。さらに、重度の認知機能障害とされた参加者全員に、嗅覚障害がみられた。

この研究では、新型コロナウイルス感染症の重症度ではなく、嗅覚障害の重症度が、認知機能障害を有意に予測していた。60歳以上の人では、認知機能障害と嗅覚の喪失が持続する可能性があるため、この結果は、今回の研究対象グループにとって特に重要な意味をもつ。

また研究チームは、1年間の電話調査を通じて参加者のワクチン接種状況も収集しており、参加者の大多数が予防接種を受けていた。研究対象者の約71.8%がワクチン接種を3回、24.9%が2回受けていた。これらのグループのうち、3回接種した人の約12.5%が感染し、2回接種した人の23.3%が再感染していた。

考えられる影響


新型コロナウイルスに感染した後に、持続的な認知機能の変化を起こす人を予測する因子としては、新型コロナウイルス感染症の重症度ではなく、嗅覚の喪失が、より有望であるとみられる。

今回の研究結果は、さらなる研究に向けた興味深い知見を提供している。ゴンザレス=アレマン博士が「ニューロロジー・トゥデイ」で述べているように、嗅覚障害は、新型コロナウイルスが嗅球(嗅覚情報の処理にかかわる脳の領域)を通じて脳に侵入しているか、あるいは、感染後も持続する疾患を引き起こしている可能性を示唆している。さらなる研究によって、両者の関連性について理解を深め、このような脳障害を予防する方法を開発することが期待される。

翻訳=高橋朋子/ガリレオ

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