新型コロナによる嗅覚喪失は、長期的な認知機能障害と密接に関係

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新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の長期的な影響、特に脳への影響については、ほとんどわかっていない。誰にどのような症状が出るのかは、謎といっていい。

全世界の新規感染者数は8月上旬の現在、7日間平均で100万人前後となっている。感染の増加に伴い、長期的な後遺症の問題はますます大きくなりつつある。そうしたなか、2022年のアルツハイマー病協会国際会議(AAIC)で発表された研究が、この謎を解くカギを発見した可能性がある。それは「嗅覚の喪失」だ。

研究デザイン


アルゼンチンの研究チームは、1年間の前向き研究を実施し、新型コロナウイルス感染症罹患に伴う中年および高齢者の長期的な認知機能障害について調査した。参加者766人は全員、アルゼンチン、フフイ州における新型コロナウイルス感染症の全検査データを記録する健康登録簿から無作為に選ばれた。参加者は、PCR検査の状況に応じて分類された。新型コロナウイルス感染症に罹患した人は88.4%、罹患していない人(対照群)は11.6%となった。

参加者の年齢は55~95歳で、平均年齢は66.9歳だった。うち女性が半数以上(57%)を占めた。参加者の平均教育歴は10.4年。アルゼンチンの教育制度は、中等教育までが12年間となる。

研究チームは、アルツハイマー病協会SARS-CoV-2感染症・慢性神経精神後遺症コンソーシアム(CNS SC2:Alzheimer’s Association Consortium on Chronic Neuropsychiatric Sequelae of SARS-CoV-2 infection)の推奨指標に従い、新型コロナウイルス感染症が認知機能にもたらす長期的影響を評価した。具体的には、記憶、注意力、言語、実行機能の4つの認知領域をテストした(柔軟な思考、自己制御、作業記憶など)。

嗅覚障害(嗅覚の喪失)の程度は、嗅覚検査によって確認された。3つの異なるにおいをかぎ分ける検査の結果によって、嗅覚障害の重症度は、正常、軽度、中等度、重度のいずれかに分類された。
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翻訳=高橋朋子/ガリレオ

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