世界初の暗号通貨のATMとして知られるのは、2013年10月にカナダのバンクーバーのWaves Coffeeの一角に設置されたビットコイン専用のATMだった。その後、これらのATMはビットコイン以外の暗号通貨にも対応し、現金やデビットカードで暗号通貨を購入したり、その逆の機能を持つようになった。
暗号通貨のATMの台数は現在、世界で3万9000台に達しているが、設置のペースは今年の年初から減速している。2020年1月から2022年1月にかけて、設置台数は5倍以上に増えて3万4388台に達したが、今年の1月以降は、5000台が新たに設置されたのみで、8月は44台のマイナスだった。コインATMレーダー(Coin ATM Radar)のデータによると、月ごとの数字が減少に転じたのは、2015年11月以降で初めてだ。
設置台数の減少は、ビットコインの弱気相場を受けてのことだ。ビットコインの価格は昨年11月のピーク時に6万7599ドルをつけたが、今年1月には3万5132ドルにまで下落し、現在は2万4000ドルを下回っている。
コインATMレーダーのパトリック・ミューラーは、「顧客はあまりアクティブではなく、それゆえにATMの需要も減っている」と語る。
7月のATMの純増数は572台で、2021年のピーク時の2000台と比較するとかなり低い。「しかし、2017年から2018年の強気相場の時期でも、1カ月あたりの純増数は250台程度だった。つまり、現在の月あたりの設置台数は、直近の強気相場の時期の2倍に増えている」とミューラーは指摘した。
現在サービス中の3万9000台のATMのうち、95%は北米に設置されている。国別では米国が87.9%と圧倒的に多く、次いでカナダが6.3%、スペインが0.6%となっている。このように設置場所が米国に集中したことが、この地域での飽和状態を招き、設置のペースの低下の原因になっている可能性がある。また、撤去されるATMもあり、ヨーロッパでは今年15台のマシンが撤去され、米国では78台が停止された。
暗号通貨のATMは、金融機関が運営することはほとんどなく、銀行口座に接続することもないため、一般的な現金自動預け払い機の動作とは異なっている。ユーザーはQRコードを通じて、現金を暗号通貨にしてデジタルウォレットに転送している。新しい暗号通貨が次々と生まれる中でも、暗号通貨のATMの99%は、ビットコインに対応している。