メンズビオレを売る進学校。心理的に安全な「商品開発ゼミ」とは

青稜中学高等学校青田泰明校長。オイシックス・ラ・大地との「SDGsゼミナール」で(撮影=曽川拓哉)


「学校をもっと良くするアドバイス」の原石を発掘したい


今回のゼミナールで印象的だったのは、なんといっても青田校長とゼミ生たちの「距離の近さ」だ。

この7月に上梓された青田氏の著書『「メンズビオレ」を売る進学校のしかけ』(2022年7月、青春新書インテリジェンス刊)から、以下引用しよう。

「おそらく私は、『校長先生』にしては生徒とよく話をするほうだと思います。青稜は、校風として昔から生徒との距離感が近く、私にもそれが合っていたということもありますし、私自身が、良くも悪くも威厳に乏しすぎるということもあるでしょう(笑)。

対外的な取材を受けた際に、生徒との距離感を近づけるために何か心掛けていることはあるのかと質問されることがありますが、あえて何かをしているということは特にありません。ただ、もしかすると、話しかけやすい空気感を自然に作っていることはあるかもしれません。

私は、生徒たちが今何を楽しいと思っているのか、疑問に感じているのか、困っているのかなど、彼らの考えをいろいろ聞いてみたいといつも思っていますし、今の中学生がハマッているゲームや音楽などのエンタメについても興味があります」



゙大人に対する「心理的安全性」だけは担保する


「これは冗談でも何でもなく、生徒と共通の話題は探せばいくらでも見つかると思うのです。たとえ共通の話題がなかったとしても、『最近どうなの?』と聞いて、子どもたちとの距離感を縮めてみる。そして、その先にある『学校をもっと良くするアドバイス』の原石を発掘したいと思うのです。

とはいえ、生徒からすると私を校内でつかまえることは容易ではないようで、よく『レアキャラ』とも言われます。それでも、顧問をしている部活動の生徒や、授業担当をしている中学校のゼミナールの生徒たちなどは、突然相談を持ちかけてくることが多々あります。

『困ったことがあったらいつでも相談に来て』などと全校生徒に対してアナウンスしているわけではないのですが、校内を歩いている時に話しかけてくれたり、校長室にフラッと相談にやって来てくれる。生徒たちが意思表示することへのハードルの低さ、言い換えれば大人に対する『心理的安全性』だけは、本当に大切にしています」

「SDGsゼミナール」のゼミ室内でも、生徒たちは実に自由に校長に話しかけていた。発言のハードルも低く、たしかに心理的安全性が担保されていることを実感した。この試みからも、「こんな風に変わるといい」「もっと良くなる」の原石のいくつかが掘り出されることが楽しみである。


メンズビオレ」を売る進学校のしかけ(青田泰明著、青春新書インテリジェンス、2022年7月刊)

文=石井節子 撮影=曽川拓哉

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