実際のところ、あまり報じられてはいないが、ハワイ州全体の景気はコロナ禍前を超えている。別表を見ていただくとわかる通り、日本の消費税にあたるGEタックス(General Excercise Tax)の徴収額は、2021年6月以降ずっと2019年を超えている。
日本の消費税にあたるGEタックス徴収総額のグラフ。2021年6月以降はコロナ禍前を上回っている(出典=ハワイ州DBEDT)
州内総生産も、2021年は2019年に比べて3.8%の伸びを示した。感染拡大当初に20%を超えた失業率も、今年3月には4.1%に。逆に、飲食や建設業を中心に人手不足が続いている。従業員不足のため、ずっとテイクアウト営業を続けているというレストランもあるが、もっともテイクアウトは効率が良く、店内飲食をしていたときよりも売り上げは良いようだ。
一方で、日本人観光客がいないハワイには別の問題も生じている。ある大手ホテルのスタッフの話は次のようなものだ。
「バスで来る団体観光客はいなくて、ほぼすべての観光客がレンタカーを借りてくるので、パーキングが圧倒的に不足している。ウーバーなどのライドシェアで到着する客もいるので、ホテルエントランスの車寄せがその台数に対応できていない。
チェックイン客が多い昼から午後3時頃の混雑ぶりは、特にクレイジーな状態だ。また、朝食はレストランに来てもコーヒーとヨーグルトだけと、いつもの生活ペースを崩さないのも米国人の特徴。旅先だからと出費を惜しまない日本人や中国人の観光客はやっぱり貴重と言える」
トロリーや観光バスも徐々に復活しているが、米国人はあまり団体行動を好まないのか、乗車率はあまり芳しくない。
日本人観光客をほとんど見ないワイキキの街は新鮮!?
さらに、レストランにはこんな変化もある。ある高級寿司店は、ハワイのネタを使った江戸前寿司を売りにしていて、日本人の富裕層にも大人気だった。ところが、米国人観光客が望むのは本格江戸前寿司。この店も日本のネタを使った伝統的な江戸前寿司を全面に押し出すようになった。
日本にもチェーンのあるワイキキのうどん店は「完全に米国人の舌に合わせた味付けに変え、ロール寿司など米国人が好きそうなメニューも増やした」と言う。あるラーメン店も「スープの味付けをローカルや米国人が好むように変えた」そうだ。今後、日本人観光客が元のように戻ってきた時、その味づけは変えてもらえるのだろうかとやや心配になる。
すっかりワイキキ名物となった「丸亀製麺」の行列
また、料理やサービスへのチップを弾む傾向がある一方で、クレームや特別な注文、サービスが悪い時のチップ減額や値引き要請なども以前より目立つようになったという。これは米国人には当然の自己主張だろうが、以前のハワイにはあまり見られなかった現象なのだ。これまで日本人観光客はさぞや大人しかったと見える。