その証拠の一つが、パンデミックにおける最大の勝者であったアマゾンによる最近の発表とニュースだ。同社は、ニュージャージー州にあるニューアーク空港に空港貨物センターを建設する計画を立てていたが、7月はじめ、この計画を断念すると発表した。この計画に関しては、労働組合や地域団体から反対があり、彼らの反発が今回の中止の主な理由とされた。
しかし、この全面撤退の発表は、アマゾンが7年ぶりの赤字となった四半期決算を発表した直後に行われている。しかもそれは、同社が2年をかけて事業を拡大し、わずか24カ月で生産能力を倍増させた直後のことだ。アマゾンは現在、各地の倉庫を閉鎖し、膨大な数のプライベートブランド商品のリストを縮小しているとも伝えられている。
一方、ターゲット、ウォルマート、ギャップは、別の種類の散財を原因とする打撃を受けている。これらの小売業者は、2021年のサプライチェーン問題から抜け出して需要急増に対応しようとするあまり、消費者心理が確実に落ち込んでいたにもかかわらず、在庫の積み増しを急いだ。
ブルームバーグの報道によると、S&Pの消費者指数に含まれる最大手企業は、商品の入荷遅れと需要の横ばいにより、予想された通りの在庫過剰に陥っている。全体で前年比26%増という、驚くほどの値だ。
ウォルマートとターゲットは、最終収益に打撃を受けても耐えられそうだが、それ以外の企業はどうだろう。エコノミストたちは、1年前から景気後退の可能性について議論してきたが、その議論は、消費者行動が変化したことを示す多くの証拠に直面した今もなお続いている。
証拠とは、たとえば、コンサルタント会社NPDグループが2022年5月に報告した内容だ。米国では消費者が小売店で購入する品が、2021年第1四半期に比べて6%減少し、消費者の10人に8人以上が今後3~6カ月間に支出を控える予定だという内容だった。
また、民間調査機関コンファレンス・ボードが発表した消費者信頼感指数の最新値は、2021年2月以来の低水準となり、期待指数は9年ぶりの低さだった。
こうしたすべての動きに関して、驚くべきことは一つだけだ。つまり、業界全体が、2020年3月のパンデミック発生以来、特にこの1年間に、消費者が発してきたシグナルに注意を払っていないことだ。
広く支持されているミシガン大学消費者信頼感指数のチャートで読み取れるメッセージは、ちょうど、2008年の住宅市場の暴落に続いた前回の不況の始まりと同様に、この2年半にわたって明確だ。
小売業者は最近、「顧客の声」戦略(買い物客が何を考え、何を必要とし、何を求めているかを聞き出す戦略)という考え方に賛同しているとはいえ、多くの小売業者が実際には耳を傾けていないことは明白だ。