グーグルのスタートアップ支援機関Google for Startupsがアジアに注目する理由

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グーグルのスタートアップ支援プログラム「Google for Startups」のアジア太平洋地域の責任者のマイク・キムは、アジアの人工知能(AI)領域のスタートアップに大きな成長の可能性を見出している。「AIによって、人々はボタンに触れるだけで、最高のリソースにアクセス可能になる。だからこそ、人々はこのテクノロジーに興奮している」と彼は語る。

シリコンバレーで育ち、リンクトインやジンガなどのテック企業に務めた韓国系米国人のキムは現在、シンガポールを拠点にアジア太平洋地域のスタートアップを支援している。彼は、優れた人材のプールや急増する人口、政府の支援などの要因から、この地域のAIスタートアップに巨大な成長の機会があると考えている。

キムは、この地域で急成長しているAIスタートアップの一例として、ソウルに拠点を置く「AI For Pet」を挙げている。設立3年目の同社はスマホのカメラとAIアルゴリズムを使って、猫や犬の目や皮膚の病気を検出するアプリを運営している。また、歯周病や関節の異常などの診断機能の拡張にも取り組んでいる。

AI For Petはすでに、韓国産業銀行、韓国資産投資証券、アクセラレーターのPOSTECH Holdingsなどの投資家から、数百万ドルの資金を調達している。そして今月初め、同社はGoogle for Startupsが新興企業にデータ分析や機械学習などのトレーニングを行うクラウドアカデミーを卒業した。

アジアの急速な高齢化も、キムがAIスタートアップの成長を楽観視する理由のひとつだ。特に、日本は2000年代半ばから世界一の高齢者人口を誇っている。「韓国や日本などの高齢化が進んだ国では、ハードウェアやロボットの需要が高まり、AIによるサポートが必要になる」と彼は話す。

一方、2022年1月にGoogle for Startupsの参加企業に選ばれた日本のラトナは、AIを活用してプロセスの自動化とデジタル化を支援するハードウェアとソフトウェアを提供している。2020年にホテルや旅館のチェックインプロセスをデジタル化するAI搭載アプリ「OMOTE-Bako」を発表した同社は昨年、ソフトバンクとスパークスグループから約1000万ドル(約14億円)を調達した。

ラトナのCEOの大田和響子は、アクセンチュアと楽天を経て2018年に同社を共同創業し、2020年にGoogle for Startupsが女性起業家を支援するプログラム「Immersion: Women Founders」に選ばれ、ネットワーキングやメンタリングの機会を提供されていた。そして5月にラトナは、Google for Startupsが日本のスタートアップに機械学習プラットフォームTensorFlowのトレーニングなどを提供するプログラムを卒業した。
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編集=上田裕資

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