「校内は太陽光発電」の進学校、ミシュラン星付シェフと商品開発

オイシックス・ラ・大地との「SDGsゼミナール」で(品川区青稜中学高等学校で。撮影=曽川拓哉)


ミシュラン二つ星5年連続獲得のシェフもサポート


ゼミ生は中学2年生と3年生の有志50名。オイシックス・ラ・大地と共同で「アップサイクル商品」を開発する。食材の選定をはじめ、商品のネーミングやパッケージのイメージ、さらにはマーケティングプランまでを生徒たちが提案するのだ。開発された商品は10月頃に、オイシックス・ラ・大地定期会員のほか、一般消費者向けにも販売が開始される予定だ。

「アップサイクル」とは、これまで捨てられていたものに付加価値をつけて、新しい商品にアップグレードさせること。オイシックス・ラ・大地は2021年に、フードロス解決型の食ブランド「Upcycle by Oisix」 を立ち上げた。サービス開始以来さまざまなアップサイクル商品を開発し、約46トンのフードロス削減に貢献している(2022年6月30日時点)。

オイシックス・ラ・大地とともに同ゼミナールに参画する長谷川在佑氏は、ミシュラン二つ星を5年連続で獲得した日本料理「傳(でん)」のシェフである。「傳」は、2022年「アジアのベストレストラン50」で日本料理店として初めて第一位を獲得、また「世界のベストレストラン50」でも堂々の20位にランクインした。そればかりか、持続可能なガストロノミーを積極的かつ情熱的に実践するレストランに対して贈られる「ミシュラングリーンスター」にも認証されている。

長谷川氏は第2回ゼミで特別講師として授業を行ったほか、その後第3回ゼミまでに、生徒たちのアイデアからできた試作品を実食、アドバイスするなどの協力もしている。

ゼミを企画した青田泰明校長は、「本ゼミナールを通して子どもたちに願うのは、『自分自身が大きな課題を解決する一員になった』体験をしてほしいこと、そしてSDGs課題という世界的な問題を自分ごとにしてもらうこと。そしてなによりも、アイデアが実際に形に──この場合は『商品』になって、世の中に広がっていくことを実感してもらうことですね」と話す。


ゼミ生たちの間を巡視し、声をかけていく青田泰明校長(SDGsゼミで)

食材は「キノコの軸」、「大根の葉」、「昆布の根元」


これまで2回のゼミで、使用する食材と商品企画は決定している。10チームに分かれた生徒たちからの多数のアイデアから絞られた、「キノコの軸」からハンバーグ、「大根の葉」から蒸しパン、「昆布の根元」からそうめん、の3種だ。


オイシックス・ラ・大地 執行役員 経営企画本部 グリーンプロジェクト所管東海林園子氏と、試作品の「だいこんの葉蒸しパン」を前に打ち合わせする長谷川シェフ。なおこの蒸しパンについてはさらなる改良提案がされ、ゼミでの生徒による試食は見送られた(写真提供=オイシックス・ラ・大地)



「昆布そうめん」を試食する長谷川シェフ(写真提供=オイシックス・ラ・大地)


オイシックス・ラ・大地がこれらの企画を持ち帰り、開発部で商品化を前提とした試作品を製作。前述のとおり、今回の第3回ゼミまでの間に、同社の東海林園子氏(執行役員 経営企画本部 グリーンプロジェクト所管)が「そうめん」「ハンバーグ」「蒸しパン」の試作品を「傳」に持参。原材料、配合料、配合割合などの資料を渡した上で長谷川在佑シェフに実食してもらい、次のような具体的アドバイスを受けた。

「昆布の香りが楽しめるように、少し太めの今のサイズはいいですね。また、にゅうめんのように温かい汁に合わせてもよさそう。

そして、あえ麺やビーフンのように、汁と合わせず炒め物にも使うとよさそうです。

あとは、生徒さんたちに色々な出汁との組み合わせを考えてもらい、アレンジレシピを考えてもらえるとよいのでは」

前述の通り、ミシュランガイドでサステナブルな店に与えられる「グリーンスター」も獲得した「傳」長谷川氏の具体的アドバイスを受け、生徒たちとのアップサイクル商品はどのように改良されるのか。

後編では第3回ゼミナールを記者が訪れ、「そうめん」「ハンバーグ」を生徒たちとともに実食する。


後編>メンズビオレを売る進学校。心理的に安全な『商品開発ゼミ』とは に続く

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「メンズビオレ」を売る進学校のしかけ (青田泰明著、青春新書インテリジェンス、2022年7月刊)

文=石井節子 撮影=曽川拓哉

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