2022年5月半ばから6月半ばにかけて、チェコ共和国、ハンガリー、モルドバ、ポーランド、ルーマニア、スロバキアに避難しているウクライナ難民およそ4900人を対象に聞き取り調査を行ったところ、できるだけ早く帰国したいと答えた人が大半を占めた。しかし約3分の2は、戦闘が終わるまで避難先にとどまるつもりのようだ。
聞き取り調査に応じたウクライナ難民のうち、近いうちに帰国するつもりだと回答した人は16%だった。そのうち、1カ月以内の帰国を予定している人は40%で、残り60%は、具体的な時期は決まっていないと答えた。
また、帰国予定者のうちの15%は、ウクライナでの滞在は一時的なものだとし、家族を訪ねたり、物資を調達したり、他の親戚の避難を助けたりすることが目的だと回答した。
ウクライナに帰国する予定だと回答した人の約4分の1は、生計を立てるため、あるいは、基本的なサービスを利用する必要があるためという理由を挙げたことが、UNHCRリポートで明らかになった。こうした点から、避難先で必要なサービスをなかなか受けられずにいる人が多いことがわかる。
リポートによれば、1カ月以内に避難先の国を変える予定だと回答した人は全体の9%だった。そのうちの3分の1が、移動したい国としてドイツを挙げ、チェコ共和国(7%)、カナダ(5%)が続いた。
多くの難民、とりわけ特別なニーズを持った人たちが、「避難先の国にそのままとどまるかどうかを左右する重要な要因」として挙げたのが、雇用の機会、滞在先の言語の学習、保育、教育、住宅などの支援だ。また、紛争を巡る状況が不透明なため、今後の計画が立てにくいと答えた人が多かった。
国連の推定では、ロシアによる侵攻を受けて、ウクライナから他の欧州諸国に避難した人は550万人にのぼる。UNHCRによれば、ウクライナ国内で住む家を追われた人は710万人を超え、1600万人近くが緊急人道支援を必要としている。国連の発表では、2月の侵攻以来、ウクライナ国外への越境記録はおよそ840万件に上っている一方、当局によれば、約310万人が帰国したという。
ロシアによるウクライナ侵攻をきっかけに、欧州は、第2次世界大戦以来で最悪の難民危機に直面している。また、国外に避難できず悲惨な状況に置かれている人も無数にいる。国外へと避難した人の圧倒的多数は女性と子供だ。戦闘任務に就ける年齢の男性は、国外への避難が禁じられている。
データを見ると、ウクライナ難民の大半は当初、ポーランドやルーマニア、ハンガリー、モルドバ、スロバキアといった近隣諸国に避難した。しかし、欧州連合(EU)域内の国境移動は容易なため、人の流れは監視されていない。