企業幹部として外部から採用された人が犯しがちな大きな誤りの一つは、勤務初日を仕事の開始日とみなすことだという。「経験豊富な人であれば、オファーを受け入れた時から勤務初日までが、戦略を練るのに最も重要な時期であると心得ている。その期間中、関係者とただ話すだけでなく、オンラインでもよいので顔を合わせることが大切だ。そこで得られた知見に基づき、プランを練ることで、良いスタートを切れる。実際に働き始める前の期間は、プレッシャーを受けずに考え、答えを出せる時間も持てる」
それ以外にも、自分が入る業界と企業に対する理解を深めるため、資料を読んだり、リサーチをしたりすることもできる。例えば、年次報告書やプレスリリースに目を通し、アナリストによる最新の分析に耳を傾ける。前もって理解を深めておけば、勤務初日を準備万端の状態で始められる。
また、新たな会社で働き始める前に、細かい事務処理は済ませておくべきだという。「企業幹部、特に下級職に就く人は、非生産的な仕事を勤務初日の前に片付けておくべきだ。上級幹部には通常、アシスタントが付いている。下級幹部の場合は前もって人事部門に連絡し、年金や銀行口座関連などの事務手続きを片付けておこう」
最後に、スムーズなスタートを切るためのプランとしてラマクリシュナンが勧めるのは、組織を理解するための戦略的なアプローチだ。「定例会議の導入を検討すること。例えば、毎週月曜日の午前8時〜午後2時の間は、直属の部下との打ち合わせの時間に確保する」
「ただし、勤務初日には予定を入れないこと。初日は、直属の部下をはじめ組織全体に対して定例会議の計画を周知し、今後についての期待を整理するために使う。部下や組織に対する期待値を設定するのは、少なくともこの定期サイクルが一巡してからにするべきだ。1カ月間継続したところで初めて、部下や組織に対する期待を具体化すること」