ポジールにある劇場が再開したのは、5月後半にキーウの国立歌劇場でオペラ上演が再開されたのに続くものだ。しかし、出演者やオーケストラの演奏者は、多くがいまだ国外に避難しているか、戦闘に参加しているかのどちらかだと、英紙『ガーディアン』は伝えている。
映画の買い付けを行うウクライナ人のポリーナ・シュリヒト(Polina Schlicht)が米音楽誌『ローリング・ストーン』に語ったところによると、映画館も多くが営業を再開している。映画興行収入ランキングサイト「Box Office Mojo」によれば、5月26日~29日の週末には129館以上の映画館が営業していた。5月12日~15日が21館、4月21日~24日が11館だったことと比べると、数は増えている。
米紙『ニューヨーク・タイムズ』によれば、ウクライナでは博物館や美術館も5月に入ってから徐々に営業を始めており、同国西部のリビウ州にある国立美術館も一部の分館が再開した。
文化施設が再開していることから、キーウは、対ロシアの戦時下にありながらも、さまざまな意味で日常を取り戻しつつあるようだ。4月後半から5月にかけて、キーウでの戦闘が収まったころから、住民が戻り始めている。
ユネスコによれば、ウクライナ国内で損傷を受けたり破壊されたりした文化財は、5月30日現在で139カ所に上る。この数には、博物館・美術館12カ所や、ハルキウやマリウポリの劇場など「文化活動のための建物」17カ所などが含まれている。
ロシアは、ウクライナへの侵攻を開始した当初、キーウの制圧を目指した。しかし、失敗に終わってほぼ撤退し、同地域での軍事計画を放棄した。その代わりに、現在は東南部のドンバスと東部地域に軍事的関心を集中させている。
キーウに戻った25歳のヴェロニカ・コジェドゥーブ(Veronika Kozehedub)は5月はじめ、英夕刊紙『イブニング・スタンダード』に対して、「制約はいくつかあるけれど、戦争前とほぼ変わらない生活ができるようになった」と述べた。「キーウはほぼいつもどおりだ」
文化施設や企業のほかに、米国などをはじめとする国々が、キーウにある大使館の業務を再開した。米国のアントニー・ブリンケン国務長官は、業務再開を発表した2022年5月18日に、こう語った。「ウクライナの人々は、侵攻というロシアの許しがたい行為に立ち向かって祖国を守った。おかげで、キーウの米国大使館には再び星条旗がはためくことになった」