古谷が新しく取り組んでいるのは、元々興味のあったスパイスの知識を活かしたプロジェクトだ。「日本草木研究所」と名付けたそのプロジェクトは、日本各地に自生する香辛料やスパイスにできる可食植物を食卓まで流通させることを目指している。
古谷は、ともコーラのプロデュースの一環で日本各地のご当地クラフトコーラと向き合う中で、日本中の山の中には、フウトウカズラという原生のコショウの一種や、ヤブニッケイというシナモン系のハーブなどが自生していることを知った。また、スギやヒノキ、ナラなどの香りの良い木がクラフトジンの香り付けに使えそうだということも発見した。
日本の里山のもつポテンシャルに魅力を感じた古谷は、「山椒や柚子に続くようなネームバリューのある日本独自の素材を世界に届けたい」と考えた。
日本草木研究所では、里山環境の保全にも力を入れている。可食植物の栽培地を作るのではなく、あくまで里山に自生している植物としての価値を大切にしていきたいためだ。それには、山の管理者を巻き込んだ新たなサプライチェーンを整えていく必要がある。
「私たちの普段の食卓にそういった素材が並ぶことで、資源の素晴らしさに気づいてもらえるのではいか。将来的にはそこで培った日本の新しい食の価値を世界に発信していきたい」と古谷は語る。
Real artists ship
しかし、日本草木研究所は古谷が今後手がけるプロジェクトの一つでしかないという。古谷の好きな言葉にスティーブ・ジョブズの「Real artists ship」という言葉がある。直訳すると「真の芸術家は出荷する」となるが、これは自分のアイデアのみに固執するのではなく、出荷できるもの、つまり対価を払ってもらえる価値のある商品やサービスを生み出すことが大切だということである。
古谷はこれからも「アイデアを考える」という自分の強みを活かして、世の中に価値を届けていきたいと考えている。彼女がこれから生み出していくゼロイチがどのように繋がり、世の中を変えていくかとても楽しみだ。
連載:ゼロイチの創り方を考える
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