ビジネス

2022.08.23 08:00

「ともコーラ」の仕掛け人、古谷知華のゼロイチ物語


古谷のクラフトコーラづくりは、“全て手作り”でスタートを切った。許可付きの貸しキッチンを借り、そこで30リットルくらいのコーラシロップを製造し、煮沸消毒した瓶に自分で詰めていった。

飲食店に納品する時も、配達業者を使わずに自分でリュックに背負って一軒一軒に届けた。ブランド名は「ともコーラ」。ガレージスタートアップならぬ、キッチンスタートアップの誕生だった。


ともコーラ200ml 

SNSで情報が広がることで、飲食店や小売店からの問い合わせも次第に増え、古谷の生産体制は早くも限界を迎えてしまった。連日試作を続けたキッチンの至る所がベタベタになり、体中にコーラの匂いが染み付いていた。古谷はベトベトの手でスマホを取り、OEMができる工場や体制を探し始めた。

製造方法がかなり複雑だったため、工場探しは思った以上に難航した。ともコーラでは必要なスパイスをただ全て混ぜて煮込むわけではなく、スパイスごとに入れる順番や温度が決まっている。粉末ではなく実の状態で仕入れ、煮込む直前に砕かないといけないスパイスもある。また、製造ラインでスパイスを扱うと他の製品に香りが移ってしまうという問題もあった。

30件以上の工場に断られた後、古谷のこだわりが詰まったコーラを作れる工場がやっと見つかった。コーラづくりを始めてから半年後のことだった。

次のプロジェクトへ


工場での生産体制が整い、ともコーラは一気に拡大フェーズを迎えた。その先は海外展開か。そう思って尋ねると、古谷からはという意外な答えが返ってきた。

「私が得意としていることはゼロイチの立ち上げの部分。一度立ち上がったブランドを大きくすることは、専門的な知見をもつ人に託しても良いと考えている」



ともコーラは始めこそ目新しい存在だったが、今ではクラフトコーラの銘柄が全国で150以上存在する。今後は販路の拡大やコストの圧縮など、一般のメーカーとしての運営が必要になる。その領域での経験が豊富な既存のプレーヤーにブランドを託す方がよいと古谷は判断したのだ。

古谷は、ともコーラを大きくできる企業に託し、別の新しいプロジェクトを進めている。
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文・写真=入澤 諒

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