暗号通貨が「1兆ドル割れ」、大手の出金停止で動揺広がる

Getty Images

暗号通貨市場は、6月13日(米東部時間)朝に大規模な急落に襲われ、世界の暗号通貨の時価総額は約1年半ぶりに1兆ドルを割り込んだ。背景には、大手のレンディング(貸し付け)サービスのセルシウス(Celsius)が「極端な市場環境」を理由にすべての引き出しを停止すると発表したことなどが挙げられる。

ビットコインの価格は、セルシウスの発表後に約14%下落して2万4000ドル(約320万円)を下回り、ここ18ヶ月間の最安値に沈んだ。

市場の急落の中で、大手取引所のバイナンスは、ビットコインの引き出しを一時的に停止していると発表した。チャオ・チャンコンCEOは13日朝に、「ハードウエアの障害の修復作業によって、その後の出金取引の処理が滞った」と説明したが、その約3時間後には復旧した。

時価総額で世界2位の暗号通貨であるイーサリアムの価格も18.3%以上暴落し、1200ドルを下回った。バイナンスのBNBやドージコイン、ソラナなど他の人気のトークンの価格もそれぞれ15%、18.3%、18.9%の下落となった。

セルシウスは、13日未明に公開したブログで、「引き出しや口座間の資金移動などを一時停止する」と述べ、将来のすべての引き出し義務を果たせるようにするための措置だと説明した。

この発表を受けて、セルシウスの独自トークンであるCELの価格は46%以上下落し、13日朝の時点で21セントで取引されている。この価格は5月上旬の約2ドル、昨年6月の約7ドルを大きく下回っている。

セルシウスは、同社のウェブサイト上で、5月17日現在で118億ドルの資産を持ち、82億ドルの貸し付けを行ない、約170万人の顧客を抱えていると述べていた。

今回の出金停止は、セルシウスの創業者でCEOのAlex Mashinskyがツイッターで、彼を批判する人たちが誤った情報を流していると抗議の声をあげた1日後のことだった。暗号通貨関連のニュースサイトThe Blockの創設者であるMike Dudasは、複数のセルシウスの顧客のアカウントがロックされ、「LUNAと似たような状況になった」とツイートしたが、これに対しMashinskyは「不確かな情報を流して恐怖心を煽るな」と抗議していた。

今回の市場の暴落は、セルシウスの発表後に加速したように見えるが、暗号通貨市場は他の外的要因によって、週末から下降傾向にあった。この分野の投資家は、驚くほど高いインフレ率と、今週末に予想される連邦準備制度理事会(FRB)による利上げに怯えていた。

「テラ」と「ルナ」の崩壊で疑問が浮上


先月はステーブルコインのTerraUSD(UST)とそれを支えるLUNA の崩壊が注目を集めた後、暗号通貨を預け入れた投資家に高い利回りを約束するセルシウスのようなプラットフォームに対する疑問の声が上がっていた。フィナンシャルタイムズによると、セルシウスの資産は2021年12月の240億ドルから先月は118億ドルにまで減少していたという。

セルシウスは世界最大級の暗号通貨のレンディング事業を運営しており、昨年は投資会社WestCapやカナダの年金基金運用会社「ケベック州貯蓄投資公庫(CDPQ)」などから7億5000万ドルを調達していた。また、セルシウスはステーブルコインのテザー(Tether)から5億ドルを借り入れたが、当初は10億ドルの借り入れを目指していたとされる。

編集=上田裕資

ForbesBrandVoice

人気記事