仮設パビリオンで終わらせない オランダ「緑の都市をつくる万博」

園芸エクスポ「フロリアード」

今年5月、筆者はコロナウイルスのパンデミック以降、初めてオランダを訪問した。本コラムでは、過去に何度かオランダの動きを取り上げてきたが、約3年ぶりに滞在したアムステルダムの街やいくつかのイベントには、より良い都市の暮らしを実現するためのインサイトがあった。

前編では、園芸エクスポ「フロリアード」を通してみる、これからのグリーン都市の実現可能性。後編では、アムステルダムで開催されたデザイン会議からの気づきをレポートする。

緑の都市をつくる万博


日本でも、チューリップはオランダを象徴する花としてよく知られているが、オランダは、世界に輸出される花の球根の6割を生産する花大国だ。そこでは、10年に一度、花と緑の万博「国際園芸博覧会」が開催される。

今年7回目を迎えるイベント、2022年アルメーレ国際園芸博覧会(The International Horticultural Exhibition Floriade Expo 2022)、略称フロリアードの会期は4月14日から10月9日までの6カ月間。開催都市のアルメーレ(Almere)は、1976年に成立したオランダで最も新しい都市。首都のアムステルダムからは、電車で30分ほどの距離に位置する。

フロリアードは、約200万人の来場者を見込むイベントだ。そのうち海外からの訪問客は約3割と想定されている。

地方自治体にとっての国際イベント誘致は、経済効果への期待という意味合いがあるが、アルメーレ市にとって、今回のフロリアードはそれ以上の意味を持つ。フロリアードの開催跡地は、緑豊かで健康的な未来の都市を体現するホルタス(Hortus)地区として再開発される予定だからだ。



一般的に万博会場というと、仮設のパビリオンで埋め尽くされたアミューズメント・パークのような場所というイメージがある。対してフロリアードは、未来の緑化都市を体現できるような空間という印象だ。実際、敷地内のいくつかの主要建築は、未来の街の一部をなす学校やアパートの建物からなる。

さらに重要なのがグリーンスペースの取り方だ。フロリーアードの空間は、グリッド状に区分されたそれぞれの区画(plot)の周りに、4メートル幅の樹木帯(arboretum)が確保されている。そこには、「空気を浄化する」など機能性を持つ樹木が、多様性を配慮して配置される。閉幕後に仮設建築が解体され、その区画が住宅など別の建物に再開発されても、このスペースは存続していくという。
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文=MAKI NAKATA

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