『Why We’re Polarized』(エズラ・クライン著、未邦訳)
ニューヨーク・タイムズのコラムニストでポッドキャスト司会者のクラインが、今日の米国政治を特徴づける分極化の背景を心理的な要因に注目して説明した本。全米や政党別、世代ごとの傾向を示す各種データを紹介しながら、政治・情報システムの変化によって、もともとは合理的な考え方をしていた人が極端な立場をとるようになってきたさまを描き出している。「米国政治の実態を理解したいなら手に取るべき」本だとゲイツはすすめている。
『The Ministry for the Future』(キム・スタンリー・ロビンソン著、未邦訳)
タイトルの「未来省」というのは、気候変動に関するパリ協定の履行にあたる架空の省庁。未来の世代の人間を救うべく、援助活動家のフランク・メイと、未来省の長官を務める外交官のメアリー・マーフィーというふたりの主人公が、気候変動対策の目標達成に向けて奮闘する小説だ。ゲイツは作中で展開される政策の一部にはダメ出しをしつつも、全体としては「この危機の切迫さを独創的に描いていて、読者に自分たちにもできることがあるという希望を抱かせる」ものになっていると評している。
『The Power』(ナオミ・オルダーマン著、邦訳『パワー』、安原和見訳、河出書房新社)
ゲイツによると、2016年刊行のこの小説を選んだのは、長女のジェニファーにすすめられたからだという。ある日突然、女たちが体から強力な電流を意のままに繰り出す力をもつようになったら、どんなことが起こるか。オルダーマンはその問いを突き詰め、男女間の支配関係が逆転した世界、それが一部の人に与える希望、さらには力のもたらす腐敗、それにともなう残虐な革命や身体的・性的暴力などを描き出している。
ゲイツは、読んだあと「今日、多くの女性が受けている不当な扱いが、より強く、直感的に感じられるようになった」といい、ジェンダーをめぐる今日の議論にとってもタイムリーな話になっていると述べている。