アップルがどうしても開発者会議をリアル開催したかった理由

アップルの世界開発者会議 World Wide Developers Conference


例えばiPhone向けのiOS 16では、ウィジェットを配置できる新しいロック画面や、機械学習を用いた写真の切り抜き、写真だけでなくビデオの中に映り込んでいる文字を読み取ることができるテキスト認識表示(Live Text)など、目新しい新機能の数々が披露された。

加えて、今後のiPhoneはどのような使い方になっていくのか? を示唆する要素も盛りこまれ、アプリ開発者のアイデアをくすぐる場面も用意されていた。

例えばFaceTime中に同時に映像や音楽を楽しむことができる機能として昨年SharePlayが発表されたが、2022年はこれを拡張し、共有先にメッセージのグループを追加。また対象もエンターテインメントだけでなく、文書やメモなどの一般的な、写真ライブラリに拡げ、iPhoneユーザー同士のコラボレーションを実現する使い方が紹介された。

開発者は、標準アプリでの実装をヒントに、自社アプリに新しい機能を取り込み、まったく異なる用途を生み出すきっかけを作り出そうとする。まさに、WWDCの基調講演は、世界中の開発者が新しいアイディアを一斉に考え始めるDay 0の瞬間なのだ。

アップルはiPhoneを登場させたとき、InstagramやTikTokなどのアプリが新しい世代のクリエイティブの場になったり、iPhoneでタクシーやフードデリバリーを呼んだり、カメラを使ってテニスやバスケットボールの球速やショットの統計を取れるようになるとは考えていなかったはずだ。

いずれも、アプリ開発者がiPhone向けアプリとしてアイデアを傾け作り出したものであり、そうした議論やトレンドが、リアルなイベントの場で生み出されてきた記憶が色濃いのだ。

まだ限定的とはいえ、アップルがリアルなイベントにこだわった理由は、iPhoneとアプリの未来を描くためだったのではないだろうか。

文=松村太郎

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