若者の多くが都会へと移住し、戻ってこない地域では、街を栄えさせるのに必要な人材が不足してしまう。米アイオワ州立大学の研究チームは、この傾向を逆転させ、人材を地元に呼び戻す方法を模索するべく、調査を行った。
調査では、自分が通った地方の学校に強い愛着がある人は、地元に戻る可能性が高いことが示唆された。こうした愛着につながるのが、学校のコミュニティーとの関わりや教師との絆だ。学校の規模も重要で、児童・生徒数が350人を超える学校では、125人以下の学校よりも卒業生が地元に戻る確率がかなり低かった。
研究チームは「地方の学校は都市部の学校ほど優れていないと言われることが多いが、地方の学校は強固な関係や帰属意識を培える特殊な立場にあり、これは長期的な影響をもたらし得る」と指摘している。
また地元に帰る人は、人口密度が低く、大学の同窓生が少ない町に戻りやすい傾向があった。こうした町では、自分がより大きな影響を与えられると感じることがその理由だとみられる。
イノベーションや創造性の多くは、他の場所で学んだ習慣や視点を新たな状況に当てはめることで生まれる。起業で成功する移民が多のは、それが理由だ。都市から地方に戻る人も同様に、変化をもたらす潜在性を秘めている。こうした人は、都市部で学んだ新たな視点に加え、自分が育った地元の人脈や知識を持っている。
研究チームは、人々が若者から社会人となるまでの健康状態を追跡する「青年期の健康に関する全米長期研究(National Longitudinal Study of Adolescent Health)」のデータを分析し、大卒者が地元に戻ろうと考える要因について調査した。
同研究では、参加者を7~12学年(中学~高校に相当)在籍時から34~43歳になるまで5回にわたり調査した。大卒者のうち、最終調査までに地元に戻っていた人は23%余りで、学校への愛着の強さが1単位上がるごとに地元に戻る確率が約66%増えていた。