ファンドの名称は「OIST-Lifetime Ventures FUND」で、インキュベイトファンドからの出資を受け、運用規模は50億円。ヘルスケアや医療、働き方、環境といった分野の課題を解決する研究者や起業家たちに投資を行い、研究や開発にコストはかかるが、今後世界を一変させる技術の創出を目指す。
沖縄から世界へと羽ばたく企業を
LtVは、ファンドの設立にあたり、沖縄だけでなく横浜と京都にも起業家支援の拠点を設置。この3都市を中心に、LtVが持つ起業家や企業のネットワークとOISTの研究をマッチングさせ、新規事業を生み出していく。
もちろん、単なる資金提供だけでなく、事業計画の策定や、初期の顧客開拓、創業メンバーの採用などといったサポートも行っていくという。
かたやOISTは、2011年、政府が世界トップクラスの研究施設を備える教育機関として整備し、沖縄県恩納村に開学した大学だ。これまでシード期のスタートアップへ積極的に投資を行ってきたLtVとコラボレーションすることで、技術の事業化を促進する狙いがある。
OISTのピーター・グルース学長は、沖縄県におけるスタートアップ創出の意義について次のように語る。
「沖縄県は、日本国内では1人当たりのGDPが最も低い。それは県内にあるのが、建設業や農業、観光業など、比較的賃金水準の低い業種がほとんどだからです。GDPを高めていくためには、新たな雇用創出が必須で、それが実現できるのは創業から5年以内の若い企業です」
一方、LtVの代表パートナーである木村亮介氏も、同社がOISTと今回コラボレーションする理由について次のように語る。
「OISTがこれまで形成してきた世界トップレベルの科学技術コミュニティは、言わば才能の宝庫です。沖縄から世界へと羽ばたく、課題解決型イノベーションの起点になると確信しています。
われわれの役割は投資活動を行うことだけではありません。起業家支援を通じて、OISTが持つコミュニティの価値や技術を、沖縄から横浜や京都、他の地域、さらには世界に転嫁させていく、エコシステムビルダーの役割も担っていきます」
昨年11月には、開学から10周年となったOIST。ピーター・グルース学長は、5月22日に行われた10周年の祝賀イベントでも「研究成果で社会に貢献していく」と力強く抱負を語っていた。研究機関がVCとコラボレーションすることで、研究の社会実装がさらに加速することを期待したい。