従来とは異なり、アフリカへの最近の渡航歴がない人にも感染が確認されているものの、いつからどのように各国で感染が広がり始めたのかについては、今のところ明らかにされていない。
「サル痘」は誤称?
このウイルスの「サル痘」という名は、誤称だと指摘される。1950年代に初めて感染が確認されたのが実験用のサルだったことから、この名称が付けられた。だが、専門家らによれば、自然宿主はげっ歯類の可能性が高いとされている。
感染した動物やヒトとの濃厚接触や、ウイルスが付いたタオルや寝具などを介した感染も報告されているが、大半は呼吸器飛沫によって感染する。また、患者の体液や傷に触れることで感染する場合もある。
サル痘感染の初期症状は、発熱、筋肉痛、頭痛、悪寒、倦怠感、リンパ節の腫れなど。発熱から1~5日以内に、水痘(水ぼうそう)や梅毒に感染したときのような発疹がみられることが多い。
発疹は初めの水疱から段階的に変化し、最終的にはかさぶたになって剥がれ落ちる。すべてのかさぶたがなくなるまで、他のヒトにうつす可能性があるとされている。また、かさぶた自体にも、ウイルスが含まれる場合がある。
サル痘に感染したヒトが重症化することはまれで、大抵は1カ月以内に自然治癒する。だが、世界保健機関(WHO)によると、子どもは成人よりも合併症を起こすリスクが高いほか、妊婦が感染した場合には、先天性感染や死産のリスクもあるという。致死率は1~10%とされている。
ヒトからヒトへは、それほど容易に感染するものではないとみられている。最近の感染例で報告されている患者は、同性愛または両性愛の男性が大半だが、サル痘感染は性感染症とされるものではない。専門家らは、「感染は性的接触以外の経路で、市中に広がっている」との見方だ。ただ、異なるクラスター間の関連性については、明らかになっていない。
感染がいつから広がり始めていたかについても、分かっていない。WHOの技術責任者、マリア・バンケルコフは、健康・医療・生命科学専門サイトのSTATに対し、「数週間前から続いていることは明らか」だろうと述べている。
「天然痘」に近いとされるが─
サル痘は大きく分けて、西アフリカ系統群とコンゴ盆地系統群の2種類がある。各国で現在、感染者を増やしているのは、致死率1%程度とされる西アフリカ系統群のウイルスとみられている(もう一方のコンゴ盆地系統群の致死率はこれよりもかなり高く、10%に達する場合もあるという)。
米疾病対策センター(CDC)によると、米国内で承認された安全な治療法は、今のところない。だが、近縁のウイルスである天然痘のワクチンのほか、抗ウイルス剤、ワクシニア免疫グロブリンなどによって、感染の拡大を抑えることが可能だろうとしている。
ただ、天然痘は40年以上前に根絶されており、ワクチンは供給が不足している。また、40~50代以下の年齢の人たちはほとんど、天然痘のワクチン接種を受けていない。