キャリア・教育

2022.05.31 08:30

従業員エンゲージメント調査で最低のスコアを無視すべき理由


ここでは、例を使って重回帰を説明する。あなたは、今夜夕食を食べるレストランを選んでいるとしよう。その際、どのような要素を考慮するだろう?

決断の50%は、料理の種類(ステーキかパスタかなど)によるものかもしれない。30%は移動が必要な距離(自宅に近いところがよいか、30分運転する意思があるかなど)に左右され、さらに環境(静かな場所とにぎやかな場所のどちらを探しているかなど)が20%を左右する。

このレストランの例を頭に、ある会社の実際の従業員調査の重回帰分析例を見てみよう。

この分析では、従業員が会社を推薦したいかどうかについて、その半分以上(53%)は直属の上司が改善案の提示を促したり、こうした案を出す人を認めたりするかどうかに左右されることが示された。

同調査には数十項目の質問があり、この重回帰分析からはこのたった一つの問いが従業員エンゲージメントのまさに半分以上を左右していたことが分かった。つまり、この会社がこの一つの問題を解決すれば、従業員エンゲージメントが大きく向上することは事実上確実だと言える。

従業員が会社を素晴らしい雇用主として推薦するかどうかについて、さらに21%は会社の経営判断の背景にある論理を従業員が理解しているかどうかが左右していた。そのためこの企業には2つの問題があり、この2つはどちらも楽に解決できるもので、従業員エンゲージメントの大部分を決定している。

管理職は無限に従業員エンゲージメントに取り組めるわけではないため、質や効率、利益、経費のような従来型のKPI(重要業績評価指標)を優先する可能性がはるかに高い。しかし、調査全体から統計的に1つか2つの簡単な問題を抽出することができれば、管理職が素早い行動を取り即座に結果を出す可能性がはるかに高くなる。

そして、もう一つ重要なポイントがある。それは、重回帰分析は会社によって異なることだ。あなたの会社の従業員エンゲージメントを決める要因は、競合企業の問題と必ず異なるだろう。そのため問題を無作為に選ぶことはできず、自社の従業員を分析することが真に必要とされている。

翻訳・編集=出田静

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